
静まり返った山あいの集落が、突然ごう音と地響きに包まれた。11日未明に大分県中津市耶馬渓(やばけい)町で起きた大規模な土砂崩れはふもとの民家を次々とのみ込んだ。男性1人が救出されたが死亡が確認され、無事を祈る住民の心を引き裂いた。女性5人の安否はいまだ不明のまま。結婚を控えていた21歳の女性もいるとみられ、懸命な捜索が続いている。
発生から約9時間後に救出された岩下義則さん(45)は、知人らの願い届かず帰らぬ人となった。「見つかったが、返事がない」。岩下さんが勤める若草工務店の社長、阿志谷清美さん(70)は、捜索活動で岩下さんの頭が見えるまで土砂を掘り下げた次男清二さん(45)の電話でそう聞いたという。「誠実で責任感がある人だったのに」と阿志谷さんは悲報に絶句した。
土木の仕事をまじめにこなす一方、米やシイタケを栽培していた岩下さん。近くに住む松本聡雄さん(54)は「優しい人で気遣いのできる人だった」と目を伏せた。
安否不明となっている江渕優さん(21)の友人らによると、江渕さんは5月に結婚を控えており、妊娠中だったという。友人らが無料通信アプリ「LINE(ライン)」などで「優ちゃん生きてる?ねえ!!」「息できるか?」と懸命にメッセージを送り続けるが「既読」にならず、友人らは「一刻も早く助けてほしい」と願う。
母屋が土砂にのみ込まれるのを免れた飛瀬幸男さん(77)方では、家にいた妻幹子さん(70)と娘ひとみさん(45)、耶馬渓中3年の孫綾音さん(14)の3人が着の身着のままで逃げて無事だった。
「起きるとばきばきという音がした。逃げる方向を間違えていたら死んでいた」と幹子さんは声を震わせる。近くの岩下アヤノさん(90)は余った煮物などをくれていたが、安否不明の一人だ。「元気でいい人だった。何とか助かってほしい」と願った。【宗岡敬介、青木絵美、田畠広景】
https://mainichi.jp/articles/20180412/k00/00m/040/094000c
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