2018年4月26日木曜日

大川小の防災体制の不備認める 高裁判決、14億円支払い命令

 東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小の児童23人の遺族が、市と県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で仙台高裁は26日、約14億3600万円の支払いを命じた。争点だった震災前の市や学校の防災体制について、初めて過失を認定。浸水予想区域外だった大川小への津波の危険性を予見できたと判断した。

 これまでの津波訴訟で、地震前の企業や学校の組織的過失が認められたケースはなかった。国が震災を教訓として学校の安全対策を進める中、高いレベルの防災体制を求める判決で、全国の教育関係者に大きな影響を与えそうだ。

 判決理由で小川浩裁判長は「大川小が津波浸水予想区域に含まれていないとしても、北上川の近くにあることから津波の危険性はあり、予見は十分に可能だった」と言及。大川小の危機管理マニュアルを改定する義務を怠ったとした上で「避難先として標高20メートル超の高台を指定していれば、津波を回避できた」と指摘した。賠償額は、一審仙台地裁判決より約1千万円増額した。

 一審判決は地震発生後、現場の教職員が児童を適切に避難させなかったとして学校側の過失を認めたが、事前の防災体制の不備は認めなかった。遺族側と市側の双方が控訴していた。

 大川小の児童は2011年3月11日の地震発生後、校庭に避難。その後、教職員が高さ約7メートルの堤防付近に誘導しようと移動した直後に津波が押し寄せた。犠牲者は児童74人、教職員10人に上った。

 標高1~1.5メートルに位置する大川小は当時、市のハザードマップで津波浸水予想区域から外れ、避難場所にも指定されていた。09年施行の学校保健安全法に基づき大川小は危機管理マニュアルを改定したが、津波からの避難先は「近隣の空き地・公園など」のままだった。

 遺族側は学校の標高が低く、近くに河川もあり津波の危険が高かったと主張。「マニュアルに具体的な避難場所や方法の記載がなく極めて不十分。検証、修正も怠った」と指摘した。

 市側は、学校が予想区域外にあり、過去に津波が来たこともないとして「津波予見は不可能」と反論。マニュアル策定は努力義務にすぎず、内容も当時の科学的知見では十分だったとした。〔共同〕

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29872040W8A420C1CR8000/

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