高度な不妊治療で知られる北九州市八幡西区の「セントマザー産婦人科医院」で2016年、不妊治療の検査のため手術を受けた女性が死亡した医療事故があり、福岡県警は23日、担当の男性医師(37)=東京都墨田区=や男性院長(68)=北九州市八幡西区=ら医師3人を業務上過失致死容疑で福岡地検小倉支部に書類送検した。
送検容疑は16年11月16日、不妊治療のため通院していた福岡県の女性(当時37歳)の卵管の通りを確認するため、腹部に穴を開けて小型カメラなどを挿入する腹腔(ふくくう)鏡検査を実施した際、担当医が子宮内に大量の空気を注入。直後に女性の容体が急変し北九州市の別の病院に運ばれたが、同年12月1日、空気が毛細血管から吸収されて血管内で塞栓(そくせん)を引き起こしたことによる多臓器不全で死亡させたとしている。
県警によると、卵管の検査で異状がなかったため男性院長が施術を中止するよう指示したが、担当医が卵管の通過性を高めようと独断で空気注入の治療を行った。同様の治療をする場合、血液に溶けやすい炭酸ガスを使うのが一般的で、空気を注入するのは珍しいという。担当医は腹腔鏡を使った気体注入治療の経験はなく、県警に危険な行為との認識があったと認めた上で「自然妊娠がしやすくなるようにやった」と供述しているという。
県警は治療に立ち会った別の男性医師(37)に制止しなかった責任、男性院長に監督責任がそれぞれあったと判断。捜査関係者によると、担当医については起訴などの厳しい刑事処分を求める「厳重処分」の意見を付けた。担当医は既に同医院を辞めているという。
同医院は1990年に開業。高度な不妊治療を専門とし、全国から不妊に悩む多数の患者が訪れていた。女性の不妊治療では、老化した卵子の若返りを目指した先進研究に取り組み、海外の専門医の研修を受け入れるなどしてきた。また、精巣で精子が作れない無精子症を原因とする男性の不妊治療では、精巣から採取した細胞を使った顕微授精を行い、国内初の出産に成功するなどの実績がある。
【柿崎誠、井上卓也】
https://mainichi.jp/articles/20180423/k00/00e/040/232000c
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