「生徒たちの貴重な証言を、なぜ軽く扱ってきたのか」。2016年10月に自殺した神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒=当時(14)=を巡り、学校側が自殺の5日後に友人らから聞き取った内容を記したメモが見つかった。市教育委員会が「見つからない」とし、女子生徒の母親が何度問い合わせても明らかにされなかった一次資料だ。「調査のおかしさを分かってもらえるはず」。母親は不信感をあらわにし、再調査を求めた。
「動揺して、頭が真っ白になった」。市教委の会見直前、母親は幹部からの謝罪に耳を疑った。
市教委は母親からの問い合わせや、メモを保管していた学校側からの申し出に対応していなかった理由として「職務怠慢」を挙げた。母親は「散々『ない』と言われてきたものが、あった。隠蔽(いんぺい)でしかない。全く信用できない」と憤った。
遺族代理人の弁護士によると、残されていたメモに記されていたのは、自殺した女子生徒を巡る人間関係や、いじめの内容。「娘の自殺直後に、生徒たちが勇気を持って学校に証言したもの。メモの情報を基に聞き取りをしてくれていたら、第三者委員会による調査報告書の内容は違う結果になっていたはず」と唇をかんだ。
調査報告書の不十分さを訴え続けてきた母親は、メモの発見を「あったんや、良かった」とも受け止める。「ほかの生徒の聞き取りメモもあるはず。事実を隠すことなく、新たな調査委員会で調べてほしい」と願った。
市教委の対応について、「全国学校事故・事件を語る会」(事務局・たつの市)代表世話人の内海千春さん(59)は「残されていたメモは、自殺直後にヒアリングされた最初の情報で、アンケートを始める前の最も重要な資料。意図的に隠したと指摘されても仕方がない」と批判。「ずさんな情報管理は、調査報告書の信用性に関わり、遺族の不信感もぬぐえない。市教委を事務局としない完全な第三者委を設けて再調査するべきだ」と指摘した。(段 貴則、阪口真平、若林幹夫)
■市教委「隠蔽ではない」
なぜ自殺直後に生徒にヒアリングしたメモは、1年半も見つからなかったのか。22日会見した神戸市教育委員会幹部は、調査不足の怠慢を認め謝罪した。ただ「隠蔽(いんぺい)ではない」と繰り返し、約2時間に及ぶ会見で頭を下げる場面はなかった。
22日午後3時半から神戸市役所で急きょ開かれた会見には、新聞社やテレビ局約10社が詰めかけた。
昨年8月、調査報告書を見た現在の中学校長が、メモの存在を市教委に伝えたにもかかわらず、市教委は学校に確認しなかった。
会見で後藤徹也教育次長らは、遺族がメモの存在についてたびたび調査を求めていたことに対しては「深く反省している」と淡々と話した。「教育長が指示していたにもかかわらず、メモの存在を確認することができなかった。怠慢だったが、意図的ではない」と謝罪した。
メモの内容については「メモと報告書の内容に食い違いはおおむねない。メモの内容の大半は、既に発生当初の調査で報告されている」などと釈明を繰り返した。メモがなぜ今まで見つからなかったかについて質疑が集中したが、「今後、弁護士らに調査を依頼したい」と述べるにとどまった。(西竹唯太朗)
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201804/0011189680.shtml
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