大阪府警富田林署から勾留中の無職樋田淳也容疑者(30)が逃走した事件は発生から2週間以上が過ぎた。府警は加重逃走容疑で同容疑者を全国に指名手配して捜索を続けているが依然、行方はつかめていない。容疑者が警察署から逃亡するという前代未聞の事件。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に問題点を聞くと、大阪府警から住民への発表が遅れ、事件発生の翌朝になったことを重大視。「自分たちの威信を重視し、住民の安全を軽視したのでは」との見解を示した。
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北村弁護士は「最初、この事件を聞いた時に最も疑問に思ったのは住民への発表の遅れです」と述べた。樋田容疑者の所在が不明になっていると府警が認識したのが12日午後9時45分ごろ。報道機関に情報提供したのがそれから約3時間後だった。メール配信サービスで住民に警戒を呼びかけたのは逃走発覚から約9時間後となる翌朝13日午前6時半ごろだった。
北村弁護士は「逃走が判明し、せいぜい30分も探して見つからなければ報道機関に発表すべき。情報がなければ住民は防御できない」と付近住民が身構える情報もなく、深夜から早朝という一日で最も無防備な時間帯に長時間、危険にさらされたことを問題視した。北村弁護士は「警察は警察の威信を重視し、住民の安全を軽視した結果ではないか。住民の安全確保をほとんど念頭に置いていないようにさえ見えてしまう」と府警が本来、最も重きを置くべきものを見誤っているのではないかと指摘した。
発表を遅らせた府警側の思惑としては、すぐに捕まえれば逃走はなかったこととしてあわよくば発表せずに済ますことも事実上可能であり、内部処理だけで済まそうといったことが考えられる。ただでさえ不祥事が多い大阪府警が、自分たちがこうむるダメージを少しでも減らそうと住民の安全よりも組織防衛を優先的に考えたことが透けて見える。
北村弁護士は府警の問題点をさらに指摘。富田林署の接見室のアクリル板が簡単にはずれた事態に、「こんなことは考えられない」と同署のずさんさにあきれた。アクリル板がはずれれば今回のように容疑者の逃走や、接見に来た弁護士が襲われるなど大変な事態が起こりうる。そのため、「アクリル板が固定されているかどうか定期的に物理的な方法で点検するのが当たり前」と北村弁護士は述べた。しかしながら、富田林署では目視程度で済ませていたことが判明している。同署の接見室のアクリル板は3枚のうち1枚が金属製の枠からはずれていた。樋田容疑者はこれを押し破って逃走したとみられる。
さらに北村弁護士は府警の釈明についても疑問を呈した。富田林署の署員が逃走に気づいたのは接見が終了して1時間45分もたっていた。これについて同署は「弁護士から声かけがあると思っていた」という趣旨の弁解をし、「弁護士が終了を連絡してくれれば逃走はなかった」とあたかも弁護士に非があるかのような言い回しをしていた。
府警の弁明について北村弁護士は「弁護士が接見終了を告げるのは、あくまでも部屋があきましたよと伝えるためでしかない。すなわち、被疑者を留置施設に戻すように促し、その接見室を別の被疑者のために使用可能とするためだ」と述べた。
接見終了を署員に告げなければ容疑者がアクリル板を押し破って逃走する可能性がある接見室など、そもそもあってはならない。アクリル板が固定されていることは当然の前提であり、警察への信頼でもある。樋田容疑者がやったように、アクリル板が簡単にはずれるようでは弁護士としては例えば凶悪な連続殺人犯との接見など危険極まりない。
治安を守るべき警察の失態によって住民に恐怖が広がった今回の事件。不祥事の歴史にまた新たな項目が増えたことを、大阪府警は厳しく受け止めなければならない。
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北村晴男(きたむら・はるお) 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ)」を配信中。
https://www.daily.co.jp/society/life/2018/08/27/0011583789.shtml
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