29日午前6時40分ごろ、福岡市東区の博多湾内の無人島・端島付近を航行中の遊漁船から「端島に男性が上陸しており、市営渡船から転落後に泳ぎ着いたと言っている」と118番があった。福岡海上保安部が約1時間後に救助した。同保安部によると、男性は同区の会社員(53)。27日夜に渡船から転落し、島で約35時間過ごし助け出された。けがはなかった。渡船には防犯カメラが4台設置されているが、男性の転落には気付かなかった。
同保安部によると、男性は27日午後8時、ベイサイドプレイス博多ふ頭発志賀島行きの市営渡船「きんいん」に1人で乗船。約20分後、携帯電話で夜景を撮影しようとして誤って海に転落したという。自力で端島に泳ぎ着き、2夜にわたり飲まず食わずで救助を求めていた。航路や転落時間から推測すると、1キロ近く泳いだとみられる。
男性は「納涼船に乗ろうとしたが乗り遅れた。酒を飲んでいた」と説明。端島には灯台があり、「明るい方向へ泳いだ。携帯を海に落として連絡できなかった」と話しているという。
男性は救助された後、手渡されたペットボトル(500ミリリットル)のスポーツドリンクを一気に飲み干した。「奥さんと職場に連絡したい」と携帯電話を借り、妻に「助かって良かった」と涙ながらに報告したという。妻は28日、福岡東署に「夫が帰ってこない」と相談していた。
市客船事務所によると、船には乗客28人(定員85人)、乗員2人が乗船。定員オーバーにならないよう乗船時に乗客数を数えているが、下船時に照合はしていない。
志賀島は博多湾の北部に位置し、博多ふ頭から直線距離で約10キロ。渡船では約30分で到着する。
運航の市、転落気づかず 下船者数把握の義務付けなし
博多港発の福岡市営渡船から乗客男性が転落した事故。市営渡船の乗客数のチェック態勢や安全対策はどうなっていたのか。
市客船事務所によると、市営渡船「きんいん」は船長と乗員の計2人で運航。博多ふ頭を出港後、西戸崎渡船場を経由し、志賀島渡船場に向かった。市は、海上運送法に基づいた運航管理基準を定め、安全対策を実施。定員を超えないように乗客数のチェックを義務付けていたが、下船客数を把握する規定はない。
今回、男性が転落した渡船では、改札を通った乗客数を目視で確認していた。一方、下船客については、利用実態の把握のために西戸崎や志賀島で集計していたものの、乗客数との照合はしていない。前田修所長は「下船時のチェックは、法でも基準でも定められていない」と説明する。
男性が転落したデッキには、危険防止用の高さ1・2メートルの手すりがあり、船長室のモニターでも防犯カメラの映像が確認できる状態だったが、転落には気付かなかったという。荒天時には船内アナウンスで注意を呼び掛ける。ただ、この日は天候も良く、呼び掛けはなかった。
前田所長は「転落を見逃したのは事実で重く受け止める。船内の巡視態勢を強化し、好天時のアナウンスも検討したい」とした。
=2018/08/30付 西日本新聞朝刊=
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/445447
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