2018年8月27日月曜日

最後の“反安倍”石破茂 「自民党スクールカースト」とオタク男子の孤独な戦い

〈ある細田派議員は、「石破は安倍さんに『丸焼き』にされるだろう」と言う。〉週刊現代8月18・25日号の一節である。9月におこなわれる自民党総裁選に安倍晋三の対抗馬として出ることを表明した石破茂だが、日々報じられるような安倍陣営による「石破潰し」が進んでいる。また選挙後の報復人事も予想されることから、この調子だと総裁選は石破を「終わったひと」にするためのイベントになりそうだ。



©文藝春秋


「なんなのあの子。ハブっちゃう?」

「石破は本当に許せないね」(注1)と安倍は周囲に漏らしているという。なんだか「なんなのあの子。ハブっちゃう?」と言っている女子高生みたいだが、それもこれも11年前、安倍が最初に首相になった際に、石破が「安倍おろし」をはじめたことを根に持ってのことだそうな。

 おまけに石破は地方で人気がある。安倍が総裁に返り咲く総裁選(2012年)の1回目の投票では、地方票を集めた石破がトップであった。いまでも「首相の国会議員票は七割。ただ、地方票は五割が石破だ」(注2)と二階幹事長は読むほどだ。

 だから安倍はただ勝つのではなく、3期目の党運営を盤石にすべく、石破を無力化する必要がある。そのために石破の強い県を行脚するほか、「内閣情報調査室の職員らを使い、石破氏の動向を徹底的に探っている」(注2)とまでささやかれている。

「サイゼに行けるようになった」岸田文雄

 総裁選なんだから政治家同士が対決するのは当たり前のはずだが、もはや「出るだけ損」の様相だ。

 象徴的なのは岸田派の会長・岸田文雄である。出馬が取り沙汰されるも「みんなが干されたら申し訳ない。それでも俺が出て問題ないのか?」(注3)と同派の1・2回生との意見交換会で繰り返し聞き、結局、安倍支持を表明する。その甲斐あってか、この8月、安倍や麻生らが集う恒例の「笹川別荘」に招かれている。女子高生でいえば教室の空気を読んで最上位のグループとの摩擦をおこさぬようにしていると、その甲斐あって放課後、サイゼに一緒にいけるようになったかのようである。

ケンカしても忘れる、を繰り返すのが政治だった

 激しい派閥抗争の時代を生き、総理総裁にまで登り詰めた宮沢喜一は、ケンカしても2年くらい、早い者だと3ヶ月ぐらいでそれを忘れてしまうのが政治の世界だと述べ、こう続けている。「政治というのは案外、関係であってサブスタンス(本質)じゃない。関係なんて『綾』ですからどうとでもなるんですな、政治の世界というのは」(注4)。だから「敵の敵は味方」「昨日の敵は今日の友」という具合に味方したり裏切ったりが繰り返される。

 こうした節操のない離合集散を批判する向きもあるが、じつは権力闘争が政治を流動化させ、過去の遺恨を水に流して新しい政治を生んできたといえるのではなかったか。「安倍一強」の今となっては……の話だが。

アイドルにもうるさい石破茂の「AKB論」

 ところで石破といえばオタクである。そもそも軍オタ代議士としてブレイクする。しかしお誂え向きの防衛大臣になるも、職員相手に長々と兵器談義をするなど、オタクのダメさをまるだしにしてしまう。「政治家に求めているのは法案と予算案を通す力量だが、彼は単なるオタクで政治家とは対極のキャラクター」(注5)との声まで出る始末であった。

 鉄道好きでも知られるが、アイドルにもうるさい。週刊ポストで河合奈保子について熱弁をふるったり、「日本におけるアイドルの時代は、1978年のキャンディーズ解散をもって終わったと思います」(注6)と持論を語るなどする。

 そうしたアイドル史観をもつ石破はAKBをこう論ずる。「人気投票にすぎないはずの“総選挙”なるものがNHKニュースで報道されるようになると、もはや私の目には、『巨大ビジネス』としての仕組みしか見えなくなってしまう。何十億、何百億というお金が動き、それを維持するために、どんどん新しい『商品としてのアイドル』が投入され、それが飽きられると、さらに新しいアイドルが投入される」(注7)。


三角大福中から麻垣康三 総裁選というセンター争い

 こうしてみるとAKBの総選挙は、自民党の総裁選と重なり合うところがある。トップ争いをイベント化してメディアを巻き込み、党のスターたちをプロモーションする。そうして新陳代謝を繰り返しながら、政治の中心であり続ける。

 石破自身が「佐藤長期政権の時には三角大福中、中曽根長期政権の時には安竹宮渡、小泉長期政権の後には麻垣康三がいた」(注8)と語るように、長期政権は複数人の後継候補を産み出し、それらが苛烈な権力闘争することで活力を生んできた。気が早いが、安倍の3期目にはこうした次期センター候補らの争いが勃発するだろう。

 これまでの、さらには総裁選で深まる政争の遺恨は水に流され、“反安倍”石破にもいずれ春は訪れるのだろうか。雪が溶けて川になって流れてゆくのは世の理、石破の愛するキャンディーズ「春一番」でもそう歌われるところである。

(注1)週刊文春2018年7月26日号

(注2)週刊文春2018年8月16・23日号

(注3)週刊文春2018年7月19日号

(注4)田崎史郎『竹下派 死闘の七十日』文春文庫

(注5)文藝春秋2014年11月号

(注6)週刊ポスト2016年10月28日号

(注7)文藝春秋2015年8月号

(注8)サンデー毎日2018年5月20日

(urbansea)

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