陸上自衛隊オスプレイの佐賀空港配備計画を巡り、佐賀県は漁業者の合意なしに受け入れ表明に踏み切った。山口祥義知事は24日の表明直後、有明海漁協を訪ね、漁業振興基金の創設を示して配備への理解を求めた。国営諫早湾干拓事業を巡る国の対応への不信感もあり、漁業者から「国と県は押し切るつもりか」との声が上がった。
山口知事は県庁での記者会見で受け入れ表明すると30分後に有明海漁協で徳永重昭組合長と向き合った。
「諫干で公共事業への不信感が高まる中、漁協と調整せず、国と交渉しなければいけなかったことが悩ましかった」と釈明。着陸料100億円を元にした漁業振興基金に理解を求めた。
配備には、自衛隊に空港を共用させないとする県と漁協との公害防止協定覚書付属資料を見直す必要がある。徳永組合長は協議の場に着く考えは示しつつも「受け入れるわけではない」と一定の距離を置いた。
漁協には、オスプレイ飛行音でコノシロ(コハダ)漁が、駐機場整備などに伴う排水でノリ漁がそれぞれ悪影響を受けるとの懸念が根強い。漁協大浦支所の弥永達郎運営委員長は「ここまで一気に進むとは。諫干と同様、漁業者はまた置き去りか」と憤る。
すでに漁協内部にも微妙な温度差がある。漁協で主力のノリ養殖は飛行音の影響を直接受けないためだ。ある漁協支所トップは「排水の影響を補償してもらえる仕組みができれば」と基金を評価。基金創設で漁業者の賛否が割れ、新たな分断を生みかねない。
少数派のコノシロ漁業者からは、漁への影響を追加調査する前に県が受け入れ方針を示したことに落胆や反発の声が上がる。ある漁業者は「環境アセスの手続きがあった諫干よりたちが悪い。結論ありきだ」とうめいた。
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知事「判断求められ」
佐賀県の山口祥義知事は24日、県庁での記者会見で、地権者の漁業者の合意を得ないままオスプレイの佐賀空港配備計画の受け入れを表明したことについて、「知事としての判断をまず示すべきだという声が議会や漁協、農協などいろんなところからあった」と述べた。
山口氏は12月投開票の知事選に、再選に向け立候補表明しており、オスプレイ配備推進派の自民党に推薦願を提出。自民県議から「この問題は先送りできない」と判断を迫られていた。
国から支払われる着陸料100億円を元にした漁業振興基金について「有明海漁協の皆さんの公共事業に対する不信感が払拭(ふっしょく)されるとは思わないが、一定の形ができたと思う」と話し、今後、漁協に理解を求めていく考えを示した。
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柳川市長「信頼関係崩れた」
佐賀県が佐賀空港へのオスプレイ配備を受け入れたことについて、飛行ルートに入る福岡県柳川市の金子健次市長は24日、緊急記者会見し「佐賀県から事前協議がなく裏切られた。信頼関係が崩れた」と批判した。
柳川市から佐賀空港まで最短4キロ。市と佐賀県は空港開設時の1998年、空港用途を変更する際には「誠意をもった協議」を行うとした合意書を結んでいた。市長は「自治体間の約束がほごにされることがあっていいのか」と述べ、週明けにも抗議する考えを明らかにした。
市が実施したパブリックコメント(意見公募)では配備を不安視する意見が9割を超えた。配備に反対する市民団体の鎌倉紘基さん(75)は「観光の街にヘリが落ちたら、という懸念が広がっている」と憤った。
=2018/08/25付 西日本新聞朝刊=
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/444089
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