火口複数、1メートル噴石も 気象庁、監視態勢を強化 草津白根山噴火
[2018/01/25]
草津国際スキー場で状況を確認するため現場に向かう警察官ら=24日午前10時10分ごろ、草津町
12人が死傷した草津白根山の本白根山(群馬県草津町、2171メートル)の噴火で、調査に入った産業技術総合研究所(産総研)などは24日、噴火口が複数あり、直径1メートルの噴石が飛散した可能性もあるとの見方を示した。降灰は火口周辺から北東に7~8キロ、幅は2キロ以上に及んだことも判明。火山性微動が同日午前と午後に計4回確認されており、引き続き警戒が必要としている。気象庁は同日、草津町と連携し、手薄だった監視態勢を強化する方針を決めた。
東京工業大・草津白根火山観測所の野上健治教授(地球化学)は24日夕、草津町役場で記者会見し、噴火口が少なくとも2カ所あるとの見方を説明した。現場には直径1メートルの大きな噴石もあったとした。
国土交通省が同日実施した現地調査に同行した産総研の研究者も映像などで、鏡池の北東方向に今回の噴火口とみられる噴気孔を確認、他にも複数ある可能性を指摘した。
映像を見た別の専門家は火砕流が1.8キロ先まで達し、20センチ程度の噴石が500メートルの範囲に飛んだ可能性があるとした。
産総研の分析では、火口周辺で採取した火山灰から新しいマグマの存在を示す物質が検出されず、マグマの噴出を伴わない水蒸気噴火だった可能性が高いことも分かった。
気象庁や草津町、火山学者らで構成する「草津白根山防災会議協議会」は同日の会合で、本白根山について、カメラや地震計などを新たに設置し、監視態勢を強化することを確認した。
会合では、噴火後に気象庁が噴火警戒レベルを3(入山規制)に引き上げた際、草津町に連絡していなかったことが明らかになった。レベル変更の際には事前に自治体に連絡するのが通例で、気象庁の担当者は情報共有に課題があったことを認めた。
県警や地元消防は同日午前10時、草津国際スキー場で捜索や状況確認を始めたが、火山性微動の影響で11時に中断した。25日午前9時に再開する予定。
噴火を受け、草津温泉街の旅館やホテルに宿泊キャンセルの問い合わせが相次いでいるという。噴火地点に近い草津国際スキー場は噴石の影響がないゲレンデ2カ所で通常通り営業した。
スキー場で雪上訓練中に死亡した陸上自衛隊員は伊沢隆行さん(49)だと関係者への取材で判明。県によると、伊沢さんの死因は背中に噴石が強く打ちつけられたことによる出血性ショックだった。負傷者も噴石による被害とみられる。
安倍晋三首相は24日の衆院本会議で、噴火に関して「新たに観測機器を設置し、観測態勢を強化するなど対応に万全を期していく。登山者などの安全確保の推進に取り組む」と強調。「亡くなられた自衛官に心から哀悼の誠をささげる」と述べた。
噴火は23日午前9時59分ごろ、本白根山の鏡池付近で発生。伊沢さんの他に隊員7人とスキー客ら4人の計11人が重軽傷を負った。
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