活発な噴気活動が見られる地獄谷=2017年9月27日、富山県立山町で(富山県立山カルデラ砂防博物館提供) |
十二人の死傷者を出した草津白根山の噴火。立山連峰の常時観測火山「弥陀ケ原(みだがはら)」(富山県)は白根山に比べ噴気活動が盛んで、地盤の隆起も観測されるなど、火山活動が活発だ。専門家は弥陀ケ原でもいつ噴火が起きるか分からないと、登山客に「正しく恐れる」ことの必要性を説く。 (酒井翔平、山本真士)
噴火対策 まだ途上
「やはり、日本の火山は活動期なのか」。白根山が噴火した二十三日。弥陀ケ原に近い立山室堂山荘のオーナー佐伯千尋さん(64)はテレビのニュースを驚きを持って見詰めた。二〇一四年の御嶽山(岐阜、長野両県)噴火に続く噴石被害。「建物を頑丈にするなど、何か対策を考えなきゃいけない」と危機感を強めた。
弥陀ケ原では過去一万年で、マグマで熱せられた地下水が爆発的に噴き出す「水蒸気噴火」が少なくとも七回発生。富山大の石崎泰男准教授(火山地質学)によると、七千八百〜二千五百年前には御嶽山噴火の数倍から十倍規模、千五百年前には十分の一(白根山噴火と同等)程度の噴火が起きたと推定されている。
県のシミュレーションでは、噴気地帯の「地獄谷」周辺で水蒸気噴火が起きた場合、最大で半径約二キロまで噴石が到達すると予測。このエリアにはターミナル駅や宿泊施設が点在する。
石崎准教授は「弥陀ケ原の活動に白根山の噴火は影響しない。火山ガスの噴出量や濃度にも大きな変化は見られない」と分析する一方、「地盤の隆起は地下のガスだまりの膨張を示唆している。膨張に地盤が耐えられなくなれば噴火する」とも指摘。「噴火時の避難場所がないのは問題。シェルターを約五十メートルの間隔で設置すべきだ」と訴える。
県は火山情報をまとめた多言語チラシを登山客に配るなど安全対策を進める。被害想定図「ハザードマップ」も作成中で、入山規制や避難などの対応を定める「噴火警戒レベル」の設定にも取り組む。本格的な防災体制を整えるには、まだ時間がかかる見通しだ。
「登山客も十分な装備を」識者
登山客の防災に詳しい県立山カルデラ砂防博物館(立山町)主任学芸員の丹保俊哉さん(44)は「立山には年100万人が訪れるが、装備が十分な人は少ないのが現状だ」と指摘する。
丹保さんが薦める装備はヘルメットやタオル、リュックサック。それぞれ噴石や噴煙などから身を守るのに役立つ。ライトやホイッスルは、避難や救助要請に有効。タオルを飲料水でぬらして口元に当てれば、のどのやけどを防ぎ、火山ガスの濃度を下げられる。
県内からの登山客は県外に比べ防災意識が低いことが過去の調査で分かっている。「県民は立山に親しんでいる分、危険性の認識が低く、噴気活動を甘く見ている」と話している。
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