2018年1月26日金曜日

死亡の陸曹長、別の隊員かばい背中に噴石

噴火した草津白根山の火山灰で覆われた山。中央はスキー場=本社ヘリから

「いつもニコニコ…信じられない」友人は突然の訃報に落胆

 12人が死傷した草津白根山の本(もと)白根山(群馬県)の噴火で、死亡した陸上自衛隊の伊沢隆行・陸曹長(49)=3等陸尉に特別昇任=が、別の隊員をかばって背中に噴石が直撃したとみられることが陸自関係者への取材で明らかになった。友人は突然の訃報に落胆した様子を見せた。

 陸自によると、伊沢さんは23日、スキー訓練をする30人の隊員のうち、上級者グループ8人の1人として午前8時半ごろから滑降を開始。同9時50分ごろにはロープウエーで上がった山頂付近から滑り始めたが、同59分ごろに噴火が起きた。周辺に噴石が飛んできたため、コース脇の雑木林に避難したが、そこにも噴石が降り、隊員が次々とけがをした。

 関係者によると、伊沢さんは別の隊員をかばおうとして覆いかぶさり、背中に噴石が直撃。現場に駆け付けたスキー場の救護員らが山麓(さんろく)に下ろしたが、伊沢さんは「肺にダメージを受けた」と話したという。

 「いつもニコニコしていて面倒見が良く、誰からも好かれる優しい人だった。まだ信じられない」。伊沢さんと約5年前、仙台市でともに整体師を目指して学んでいた時に知り合ったという群馬県安中市の整体師、河村哲也さん(36)は死を悼んだ。

 河村さんは地元で整体院を開業。伊沢さんは過去約25年所属していた自衛官に昨年3月に戻り、同県榛東(しんとう)村に赴任した。昨年5月に伊沢さんが河村さんの整体院を訪れて再会し、「ご縁だね」と喜んだという。

 帰り際、「また会えたらいいな」という伊沢さんに「また遊びに来てくださいね」と声をかけたのが最後になった。「『別の隊員をかばって負傷した』という話も聞いた。伊沢さんらしいなと思う。すごい人です」。河村さんはそう言った後、絶句した。

 伊沢さんはブログを開設していた。昨年3月31日には「★転職しました♪」のタイトルで、自身の迷彩服姿やヘリコプターの写真を掲載し、「おかげさまで約1年間、陸上自衛官として勤務することになりました」と報告している。

 趣味は古典的なスキー技法の「テレマークスキー」、出没地は「三沢市、八甲田山等々」などと自己紹介。昨年7月29日には「自衛官になって本当にあっという間の4か月。残り約9か月を切る♪」と書き、「強さを求められる自衛隊の中で……なんやかんや言って毎日、助けられている」などとつづった。

 今年の元日には「おかげさまで昨年は本当に素晴らしい体験の連続でした。皆さまに感謝の1年でした」と振り返り、「今年は改めて人生のミッション『世界の笑顔に貢献する』に基づき行動します」と宣言していた。【鈴木敦子、前谷宏、鈴木一生】

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https://mainichi.jp/articles/20180126/k00/00m/040/163000c

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