草津白根山の本白根山(2171メートル、群馬県)の噴火が突きつけた課題。無警戒だった火山に今後どう対処すべきかだ。予算は限られ、全国111の活火山を完璧にカバーすることはできない。そこが専門家らの悩みだ。
草津白根山の活動を長年研究している東京工業大の野上健治教授は「ノーマークは本白根山に限らない」と指摘する。活火山の定義の一つは、過去1万年以内に噴火したこと。そのため、現在噴火の気配のない山も含まれる。50火山は特に警戒が必要な「常時観測火山」だが、活動度が低いその他の61火山は重点監視されていない。
そのうえ、草津白根山のように常時観測対象でも、監視が手薄なエリアをもつ火山も少なくない。草津白根山では、気象庁や国土地理院、東京工業大などが計19カ所に地震計やカメラ、地殻変動を調べる測位計、マグマの上昇による山体膨張を捉える傾斜計など計27台を設置していた。ほとんどは白根山(2160メートル、同)を観測し、静穏な本白根山は無警戒だった。
主な理由は予算の制約だ。気象庁の火山観測予算は2014年度に約8億円だったが、同年度の御嶽山の噴火を受け15年度には54億円に急増したものの、17年度には15億円に落ち込んだ。
その中でどう対応するか。野上教授は「噴火前にあるはずの兆候がない噴火。火山観測の哲学が覆された。何を測ればいいのか考えることからスタート。静かな火山に有限の研究資源を投入するのは簡単ではない」という。文部科学省の竹内英地震・防災研究課長は、「研究者にとって、静かな火山は成果が上がらず研究対象にしづらい」との背景も指摘する。
今回の噴火を教訓とするため、名古屋大の山岡耕春(こうしゅん)教授は「火山の活動度に縛られず、まず観光客が行くような被害が大きくなる活火山を改めて選び出すことが必要。そして優先順位を付け、今回のような前触れが少ない水蒸気噴火を起こす可能性を調べるべきだ。地熱開発技術など、従来重要視しなかった手法を活用することも大切だ」と提案する。【飯田和樹】
https://mainichi.jp/articles/20180127/k00/00m/040/105000c
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