
「裁判官が子供たちの笑顔を思い浮かべながら判決を書いてくれた」。朝鮮学校を無償化の対象から外した国の処分を初めて違法と判断した28日の大阪地裁判決。法廷や裁判所周辺では、大阪朝鮮高級学校(東大阪市)の関係者らが全面勝訴に大歓声を上げた。日朝関係の悪化や、無償化から外れたことなどで生徒減少に悩む同校。卒業生は「私たちの母校がようやく認められた」と喜んだ。
午前11時過ぎ、地裁202号法廷。裁判長が「処分を取り消す」と判決文を読み上げると、学校関係者らで埋まる傍聴席からは「やった。勝ったぞ」との声が相次いだ。涙を流す保護者や生徒の姿もあった。
裁判所前では、学校側の金星姫(ソンヒ)弁護士が「行政の差別を司法が糾(ただ)す!」「勝訴!」と書かれた紙を高く掲げた。約100人の支援者らが集まり、抱き合って喜び合う人もいた。金弁護士は「司法が適正な判断を示してくれた」と興奮した様子で話した。
学生や保護者らは毎週、大阪府庁前で無償化適用を訴える活動を続けてきた。在学中から参加しているという卒業生の女性(19)は「在日コリアンとしてのルーツを教えてくれた学校を壊さないでほしい」と話す。
近畿南部に住む女性は在日4世で、幼稚園の頃から朝鮮学校に通ってきた。「朝鮮の歴史を学びたい」と、兄2人も通った高級学校に進んだ。食品店を営む両親は裕福ではなく、年間約50万円の学費を捻出するのは大変だったろうと気遣う。
高校生の頃に無償化問題に関心を持ち、大阪市内のコリアンが多く住むJR鶴橋駅前などで署名活動を始めた。「生徒は日本で生まれ育った普通の子供たち。在日というだけで差別しないで」と訴える。
元教員によると、無償化で他校と授業料の格差が広がり、生徒の減少で学校経営は悪化。老朽化した校舎を保護者がボランティアで修繕しているという。
元教員は北朝鮮のミサイル発射のニュースが流れる度に「また学校が批判される。もう撃たないでほしい」と願う。拉致問題については、子供たちに「やってはいけないことをした」と教えた。
学校では以前のように故金日成国家主席をたたえる歌を生徒に歌わせることもなくなり、朝鮮総連の影響は薄まったという。「朝鮮学校も日本社会で共存できるよう変わろうとしている。日本の学校と同じように無償化や補助金を認めてほしい」と話す。【原田啓之、山崎征克、遠藤浩二】
日朝関係に翻弄
朝鮮学校の無償化問題は、時々の政治や日朝関係に翻弄(ほんろう)され続けてきた。
高校授業料の無償化は、日本が1979年に批准した国際人権規約に盛り込まれていたが、政府はこの条項を留保し続けてきた。流れが変わったのは2009年の政権交代。無償化を公約に掲げた民主党政権になり、実現した。
しかし、中井洽・拉致問題担当相(当時)は拉致問題などを理由に朝鮮学校を対象外にするよう要請。10年4月に無償化法が施行されても、朝鮮学校には適用されなかった。
文部科学省は同年11月、「外交上の配慮ではなく、教育上の観点から判断すべきだ」との立場で審査基準を定めたが、直後に北朝鮮が韓国を砲撃。菅直人首相(同)は審査凍結を表明した。
政府は11年8月に審査を再開、翌年に国際人権規約への留保を撤回したが、再び政権交代が起きた。13年2月、自公政権の下村博文文科相(同)は朝鮮学校への適用を想定した規定を削除し、無償化の道は閉ざされた。【原田啓之】
朝鮮学校
戦後、在日朝鮮人が子弟に朝鮮語を教えるため各地に設置した「国語講習所」が前身。学校教育法上は「各種学校」の扱いで、都道府県ごとの学校法人が運営する。文部科学省によると2016年5月現在、日本の教育課程に合わせた幼稚班、初・中・高級学校が28都道府県に66校(休校5校)あり、児童・生徒数は6185人。うち高級学校は1389人。授業は朝鮮語で行い、朝鮮半島の歴史や地理を学ぶ時間もある。
https://mainichi.jp/articles/20170728/k00/00e/040/251000c
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