日本政府は29日未明、北朝鮮が28日午後11時42分ごろ、同国中部から弾道ミサイルを発射し、日本海の日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したとみられると発表した。ミサイルは約45分間飛行し、高度は3500キロメートル超、飛距離は約1000キロメートル。日米両政府は大陸間弾道ミサイル(ICBM)だとの見解を示した。北朝鮮の朝鮮中央通信は29日午前、ICBM「火星14」の2回目の試験発射に成功したと伝えた。
防衛省によると発射場所は北朝鮮の慈江道舞坪里付近。落下地点は北海道・積丹半島の西約200キロメートル、奥尻島の北西約150キロメートルの海上とみられる。ミサイルの飛行時間は過去最長、高度も過去最大だった。菅義偉官房長官は29日未明に記者会見し、付近を航行する航空機や船舶への被害は確認していないと述べた。
安倍晋三首相は同日未明、首相官邸で記者団に「日本の安全への脅威が重大かつ現実のものとなったことを明確に示すものだ。北朝鮮に対し厳重に抗議し、もっとも強い言葉で非難する」と強調。「米国、韓国をはじめ、中国、ロシアなど国際社会と緊密に連携し、さらに圧力を強化していく」と語った。
首相は発射情報を受け、29日未明、官邸で国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合を開催し情報収集と分析を急いだ。岸田文雄外相兼防衛相は記者会見で「ミサイルの最大射程は少なくとも5500キロメートルを超えるとみられ、ICBM級と考えられる」と指摘した。発射角度を通常より高くする「ロフテッド軌道」で発射されたとの見方も示した。
米国内では米国を射程範囲内におさめる弾道ミサイルの完成が近いとして波紋が広がっている。トランプ大統領はホワイトハウスを通じて「武器や実験はより北朝鮮の孤立を深めることになり、経済を弱め、国民を困窮させる。米国は米国土と地域の同盟国を守るために、必要な手段をすべて取っていく」との声明を出した。
日本政府は米韓両国とともに北朝鮮への圧力を強める。岸田氏は29日午前、ティラーソン米国務長官と電話で協議し「北朝鮮に最大限の圧力をかけていく必要がある」との認識で一致した。日米韓3カ国が連携し、北朝鮮に対する「厳しい措置」を盛り込んだ新たな国連安全保障理事会決議の採択をめざす方針も確認した。
北朝鮮のさらなる挑発行為を抑止するため、両国が「防衛体制と能力向上のための具体的行動」を進めることでも一致。米国による日本への「核の傘」提供を含む「拡大抑止」の重要性を確認した。岸田氏は韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相とも電話で協議する。
国連安保理は緊急会合の開催に向け調整に入った。グテレス事務総長はミサイル発射は安保理決議違反だとし「北朝鮮の指導者は国際的義務に十分に従い、朝鮮半島問題を解決するために国際社会とともに働かなければならない」と訴えた。
北朝鮮によるICBM級弾道ミサイルの発射は7月4日に続き2回目。この時は約39分間の飛行の後、日本のEEZに落下した。日米両政府は27日の朝鮮戦争の休戦協定締結64年に合わせ、性能を高めたICBMの発射に踏み切る可能性が高いとみて警戒を強めていた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H0I_Z20C17A7MM0000/
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