原子力発電所の使用済み核燃料から出る核のごみの処分地選びに向けて、政府は「科学的特性マップ」を公表した。地層の安定性などから4つの区分を設け、事実上の適地を示した。政府はこれをもとに複数の候補地を絞り込む。
原発はこれまで廃棄物処分が先送りされ、「トイレなきマンション」と言われてきた。日本がエネルギーの一定割合を原発に頼る以上、処分をこれ以上先送りすることはできない。電力業界だけに任せずに、国が前に出て処分に動き出したことは前進といえる。
ただ、海外でも処分地が決まったのは北欧の2カ国だけで、多くの国で地元との調整が難航している。日本でも一筋縄ではいかないだろう。政府は処分がなぜ必要かや、安全性について国民に説明を尽くすべきだ。候補地を透明なプロセスで選ぶことも大事だ。
核のごみは地層深くに埋めることになっている。放射性物質が外に漏れないよう、地層が安定していることが必須の条件だ。
公表した地図はこれに加え、輸送時の安全性やテロ対策も考慮して「海岸から20キロ以内」も要件にした。その結果、国土面積の3割、約11万平方キロを「好ましい条件がそろっている」とした。
政府は今後、調査を受け入れる自治体を募るとともに、国として複数の候補地を絞り、地元に打診するとしている。だが、可能性のある自治体は900にも及び、候補地を絞り込むのは容易ではないだろう。
人口密集地から離れていることや必要な面積を確保できることなどが要件として考えられるが、政府は基準や手順を示していない。唐突に候補地を示せば、地元から「なぜ、うちなのか」と反発が出るのは避けられないだろう。
国は自治体や専門家らの意見をよく聞いたうえで、候補地の決め方や手順を詰め、事前に示すべきだ。立地段階になって風評被害が広がらぬよう、処分の安全性やリスクについて国民全体の理解を深めることも欠かせない。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO1941358028072017EA1001/
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