2017年10月9日月曜日

リコール成立 河津町内混乱、対立続く

 八日に投開票された相馬宏行河津町長(57)のリコール住民投票は県内三例目の首長解職となった。「町民が望んだ結果」とリコールを請求した住民グループは歓声を上げ、失職した相馬氏は「不徳の致すところ」と落胆の表情。五十日以内に実施される町長選まで町長不在が続き、混乱は尾を引きそうだ。

◆前町長「厳しい結果」

写真

 「大変厳しい結果になった。私としては何も言うことはない」。即日失職した相馬氏は八日夜、町役場での記者会見で淡々と切り出した。リコール賛成票が有効投票の三分の二を占める大差を目の当たりにしたショックからか、表情に覇気はなく、複合施設建設をトップダウンで進めようとしていたころの強気な姿勢はみられなかった。

 十七億円の大事業が事実上白紙になったことについては「町の将来を見据えて、ぜひ進めたかった。町民が文化活動をする場所がなかったので非常に残念。町民に理解をいただけなかったのかな」と漏らした。

 「議会の議決をいただいて進めてきたことですから何ら私には問題がなかったのかなと思います」と無念さものぞかせた。リコールを進めた町議らについては「議会制民主主義を無視した責任はあると思う」と非難した。

 十一月に実施される町長選への出馬については「支援者とゆっくり時間をかけて話したい」と語るにとどめた。

◆施設反対派「安心した」

町長リコールが成立して拍手して喜ぶ住民グループ代表者の稲葉誠次さん(左)=8日、河津町で

写真

 一方、リコールの請求代表者で不動産業、稲葉誠次さん(67)宅にリコール成立の一報が入ると、集まったメンバーから「やった」という歓声や拍手が上がった。稲葉さんは「町民が真剣に町のことを考えて望んだ結果。安心した」と喜びの表情を見せた。

 稲葉さんは昨年十一月、事業に反対する町議五人が事業延期を求める三千百六十八人分の署名を提出した際に、計画の進展につれて事業予算が高騰していることを知り、「おかしい」と感じた。町議会を傍聴し、強引に事業を進めようとする町長を見て、リコールの署名活動を決意。同じ考えの町民とグループを立ち上げ、町長が軽視した署名数から「あしたの河津をつくる3168」と名付けた。

 「カラオケのマイクも握った経験がない」というほど自他共に認める控えめな性格だが、生まれて初めて街頭演説に立ち、事業の問題点を住民目線で訴え続けた。稲葉さんは「今日で活動を終える。町長選には関わらない」と話し、解職成立を受けてグループ解散を宣言した。

 町長選に向けては、リコールを支援した町幹部OBや町議らが協議して候補者擁立を急ぐ。町長派も候補者を立てる構えで、複合施設をきっかけとした町内の対立はしばらく続きそうだ。

◆[解説]事業強行の姿勢に失望

 河津町長のリコールが大差で成立したのは、町民の声に耳を傾けることなく施設建設を強行しようとした町長の姿勢に、町民が「ノー」を突きつけた結果だ。

 町長は「事業は議会の議決を経ている」と繰り返し主張したが、町議会での施設への賛否は六対五と僅差だった。にもかかわらず施設建設を強行しようとした結果、「事業を止めるには町長解職しかない」と考える人々の結束を強めた。

 リコール回避のチャンスはあった。昨年十一月、事業の一年延期を求める署名が提出された時、署名数がリコール請求に必要な人数を上回っていたにもかかわらず町長は具体策を講じなかった。それが住民投票告示の直前になって一転、事業延期を表明。「早く表明すれば混乱は避けられた」と町民に失望が広がった。

 投開票直前の五日間、町長は公務を休んで街頭宣伝に専念したが、これも裏目に出た。「仕事を休んで保身に走っている」と、町民の反応は冷ややかだった。

 一方、「違法行為や大きな失政があったわけでもないのに町長を辞めさせるのはいかがなものか」と、リコールの手法を批判する人もいる。町長選に向けて、さらに町内の混乱は続きそうだ。

(中谷秀樹)

この記事を印刷する

Let's block ads! (Why?)

http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20171009/CK2017100902000087.html

0 件のコメント:

コメントを投稿