16日、農産物直売所に立ち寄り、支持を訴える山尾さん=大府市で |
衆院選で全国的注目を集めた瀬戸市や日進市などの愛知7区。週刊誌に既婚男性との交際疑惑を報道されて民進を離党し、無所属となった山尾志桜里さん(43)が劣勢の予想を覆し、自民前職の鈴木淳司さん(59)との一騎打ちを八百三十四票差で制した。背景には自分の親世代の高齢層をつなぎとめる地道な活動と政権批判票を取り込むしたたかな戦略があった。
「総理に立ち向かう議員として、引き続き役割を任せていただきたい」。山尾さんが街頭演説で好んで使った言葉だ。チラシや看板には「立ち向かう。」の文字が躍る。
無所属で比例復活のない背水の陣。陣営は山尾さんに批判的な人にも「これで政治生命を絶つのはもったいない」と思ってもらう作戦を取った。小規模な集会を重ね、有権者とじっくり話せる時間も取り、疑惑には「やましいことはない」と言い続けた。
周りを女性スタッフで固めて笑顔をふりまく姿に、相手の鈴木陣営を手伝う七十代の男性ですら「不倫なんかしてないと思う。たくさん回ってるし」と話すほど。
投開票日に実施した本紙の出口調査によると、得票率で山尾さんは鈴木さんより六十代で17・8ポイント、七十代で22・8ポイント多く得た。後援会関係者は「この世代は自分の娘のようにみてくれているのでは」と話す。
「オール野党対自民」の構図に持ち込めたのも勝因。山尾さんが無所属出馬を決めたことで、共産が候補擁立を見送った。別選挙区が地盤の民進前職が希望の党候補として出馬する話も浮上したが、調整の末に公認リストから消えた。
非自民の労組票が多い選挙区で政権批判票の受け皿をつくった。待機児童問題や「共謀罪」の審議で政権に切り込んだ実績を強調。改憲問題も「総理の九条が成立すれば、この国の平和に対する姿勢が変わる」と共産票の取り込みを狙った。
「重要なのはストーリー」。選挙戦の終盤、陣営スタッフが言った。出口調査で「加計(かけ)問題など首相の政治姿勢を重視する」と答えた人の八割は山尾さんに投票。「バッシングに負けず無所属で立ち、総理と戦う議員」というストーリーに野党支持層が反応し、支持政党のない層も六割以上を取り込んだ。
誤算は、山尾さんがセールスポイントとする「教育、子育ての充実策」を重視する世代の半数を逃したこと。当選確実となった二十三日未明、山尾さんは「これほどお父さんお母さんの手を握った選挙は初めて」と語ったが、出口調査の得票率では鈴木さんに二十代で22・8ポイント、三十代で16・6ポイントの差をつけられた。
どちらかに決められなかったとみられる白票も前回の二倍近い六千九百票。前回は山尾さんが約五千票差で勝っており、選対幹部は「山尾に失望した分が白票だったと思う。これから国会で自分の主張を出していけば離れた人も戻ってくるはず」と話す。
(森若奈)
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