学校法人「森友学園」に関する財務省の決裁文書改ざん問題が安倍政権を揺るがす中、同省トップの麻生太郎副総理兼財務相から失言が飛び出した。麻生氏は30日の参院財政金融委員会で渋々陳謝したが、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問でひと区切りつけようとした政権側には大きな誤算。野党はさらに辞任要求を強めている。【小山由宇、光田宗義】
麻生氏は29日の財金委で、米国を除く11カ国による環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の新協定(TPP11)に関する新聞報道が少ないと指摘。「森友の方がTPP11より重大だと考えているのが日本のレベル」と批判した。
麻生氏がマスコミをやり玉に挙げるのは珍しくないが、今回は前提がおかしいうえ、自身が改ざん問題で政治責任を問われている最中だ。それでも動じた様子はなく、30日の記者会見で「不祥事を許した組織のトップとしてのレベルをどうお考えか」と皮肉交じりに問われて「レベルは自分で判断するもんじゃない」と切り返した。
その後の財金委でも「森友問題を軽んじている」という野党の追及を「そういった印象を与えたのであれば、その点に関しては訂正する」「森友と比較したのはよろしくないという点に関しては反省する」とかわし、委員会は紛糾。自民党の委員長が対応に困ると、最後にようやく「誤解を招くような発言があったとすれば謝罪する」と折れた。
改ざん問題で内閣支持率は急落し、安倍晋三首相は「国民に深くおわびする」と火消しに追われている。自民党の鴨下一郎元環境相は30日、TBSの番組収録で「弁解の余地はない。深く反省し、説明を尽くしてほしい」と麻生氏に苦言を呈した。公明党幹部は「これまでの失言は『麻生氏だから』で許される部分があったが、今はだめだ」とあきれた。
立憲民主党の枝野幸男代表は記者会見で「もうやる気がないのではないか。それならさっさと地位を引かれるべきだ」と麻生氏の辞任を求めた。
「一行もない」は誤り
麻生太郎副総理兼財務相は29日の参院財政金融委員会で、米国を除く環太平洋パートナーシップ協定参加11カ国による新協定「TPP11」の署名式を巡る報道について、「日本の新聞には一行も載っていなかった」と述べた。しかし、8日(日本時間9日)にチリ・サンティアゴで行われた署名式について毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞などは9日付夕刊や10日付朝刊で報じている。
麻生氏は30日の参院財政金融委員会で「(署名式は)1面トップを飾ってもおかしくない記事。日経新聞でも3面でしたかね。1面に載っていなかったので一行も載っていなかったと申し上げた」と弁明したが、日経は朝刊1面に掲載した。
毎日、朝日などの10日付朝刊1面トップ記事は佐川宣寿前国税庁長官の辞任だった。【井出晋平】
麻生氏の発言内容
麻生太郎副総理兼財務相の29日の参院財政金融委員会での答弁は次の通り。
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今、「TPP11」というのが日本の指導力で間違いなく締結された。こないだ茂木大臣(経済再生担当相)、0泊4日でペルー(正しくはチリ)往復しておりましたけど、日本の新聞には一行も載っていなかったですもんね。本人としては、甚だ憤まんやるかたなかったんだと思いますけど。
まあ、日本の新聞のレベルってのはこんなもんなんだなと思って、経済部のやつにぼろかすに言った記憶ありますけど。みんな、森友(学園)の方がTPP11より重大だと考えているのが日本の新聞のレベル。政治部ならともかく経済部までこれかと、おちょくりにおちょくり倒した記憶がありますけど。これはものすごく私は大きかった条約締結の一つだったと思う。
https://mainichi.jp/articles/20180331/ddm/005/010/137000c
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