2018年3月26日月曜日

(社説)自民党大会 岐路に立つ「1強」政治

 森友学園をめぐる公文書改ざん問題で安倍政権が揺らぐ中、自民党大会が開かれた。

 安倍首相があいさつの冒頭、「行政全般の最終的な責任は首相である私にある。改めて国民に深くおわびする」と謝罪し、全容解明と再発防止を誓ったのは当然だろう。

 一方で、首相は同じあいさつで「いよいよ結党以来の課題である憲法改正に取り組む時が来た」と、改憲への意欲を改めて強調した。

 与野党を超えて、政治がいま最優先すべきは改憲ではない。森友問題が失墜させた政治と行政への信頼を立て直す。そこにこそ力を尽くすべきだ。

 国民の財産である国有地が、8億円もの異例の値引きで売却されたのはなぜなのか。一連の経緯を示す公文書がなぜ、どのように改ざんされたのか。背景も含め、十分な解明がなければ国民の納得はえられまい。

 問われているのは佐川宣寿・前国税庁長官だけではない。財務省だけでもない。発足から5年余の安倍政権のあり方そのものを省みる必要がある。

 政権が国政選挙に大勝し続けてきたのは事実だ。だがそこで得た「1強」の数の力を、適正に使ってきたとは言えない。

 まず思い浮かぶのは、歴代内閣が憲法上認めなかった集団的自衛権の行使を、一内閣の閣議決定で容認したことだ。憲法に基づく野党の臨時国会召集要求を放置したままの衆院解散も、忘れるわけにはいかない。

 国民の「知る権利」に背く公文書のずさんな扱いは、財務省のみならず、加計問題での文部科学省の「総理のご意向」文書や、防衛省のPKO日報をめぐっても繰り返された。

 憲法や法律などさまざまなルールを軽んじる。従う官僚は取り立てる一方で、ひとたび敵とみなせば徹底的にたたく。忖度(そんたく)という言葉に象徴される政官関係のゆがみは、「1強」のおごりや緩みと無縁ではない。

 党大会で首相が改憲に意欲を示した9条への自衛隊明記など4項目は、そもそも改正の必要がないなど説得力を欠くものばかりだ。

 党大会までの「合意」を取り繕った自衛隊明記案には、党内にも異論がある。連立を組む公明党を含め、多くの政党も前のめりの改憲には否定的だ。

 何より改憲は、国民多数の賛成がなければ成立しない。大事なのは国会議員の数ではなく、幅広い国民の合意である。

 それでも改憲を急ぐのか。信頼回復を優先するのか。政権党は岐路に立っている。

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