29日早朝、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが北海道上空を通過し、全国瞬時警報システム(Jアラート)の対象地域となった県内にも緊張が走るとともに、日本の安全保障を一方的に脅かす挑発的な暴挙に怒りの声が広がった。
◇防災無線不具合なし
県庁では、午前8時40分から各部局の防災監16人を招集し、防災監会議を開催。県内に落下物や被害がないことが報告された。
県防災・危機管理課によると、同課では午前6時2分に文字情報を送るEm-Net(エムネット)からミサイル発射の情報を受け、職員10人ほどが30分以内に緊急参集。県内の各市町村と連絡を取り合った。
県漁政課によると、午前6時ごろには、北海道・釧路沖南方30~40キロの海域ではさき漁協と久慈町漁協の漁船14隻が操業していたが、同7時半ごろには全船の無事を確認した。茨城海上保安部は各漁協を通じて漁協に所属する漁船の安否を確かめた。
県によると、Jアラートと連動して住民に情報を伝える防災行政無線に不具合は確認されなかった。
◇通勤の足に乱れ
北朝鮮のミサイル発射は、通勤時間帯の交通にも悪影響を及ぼした。JR東日本水戸支社によると、午前6時2分に安全確認のため常磐、水戸、水郡の各線で一時運転を見合わせた。同18分に運転を再開し、最大約20分遅れた。
首都圏新都市鉄道によると、つくばエクスプレスも午前6時2分に上下17本の運転を見合わせた。同17分に運転を再開し、最大17分の遅れが生じ、約5千人に影響した。つくば駅前でバスを待っていた東京都大田区の研究所職員、山内俊一さん(57)は「茨城には最先端の研究をしている筑波研究学園都市や日本原子力発電東海第2原発があり、北朝鮮が狙いを付けてもおかしくない。茨城県民や政治家はもっと危機感を持つべきだ」と話した。
つくば市竹園の会社員、伊藤博則さん(54)は「日本は北になめられている。今回こそミサイルを迎撃して日本にも迎撃能力があることを見せつけるべきだった。日本が憲法上の制約で軍事攻撃できないなら、考えられる限りの実効性がある経済制裁が必要だ」と語った。
高校や中等教育学校などを運営する土浦日本大学学園(土浦市)が3校を休校としたほか、青葉台初等学部と中等学部(かすみがうら市)が始業を1時間、大成女子高(水戸市)が始業式の開始を15分それぞれ遅らせた。
◇訓練通り避難
県内では7月に龍ケ崎市で弾道ミサイルの着弾を想定した住民の避難訓練が行われたばかり。この訓練に参加した木村武さん(68)は「訓練通りにガラスのない部屋に避難したが、まさかこんな短期間に実践するとは思わなかった」と話し、木村貢さん(76)は「訓練をやったおかげで落ち着いていた。憤りはあるが、われわれではどうしようもない」と漏らした。
同市の中山一生市長は産経新聞の取材に対し「国民は大きな脅威を感じている。こういうことは繰り返してほしくないという思いだ」と述べた。
県都の水戸市は、県や警察、消防などと連携して情報収集を行い、市ホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、地元ラジオ局の水戸コミュニティ放送(FMぱるるん)への割り込み放送などで、市民への注意喚起を徹底した。高橋靖市長は「住民の安全を脅かす行為で、断じて許すことはできない。国にはあらゆる手段で断固とした対応をしてほしい」とコメントした。
また、Jアラートに注文を付ける声もあった。土浦市荒川沖の主婦、谷口裕子さん(45)は「早朝に聞き慣れない音で携帯電話が鳴り、慌てて操作したら表示が消えてしまった。テレビを見てやっと北朝鮮がミサイルを発射したと分かった。夏休みで家族全員が家にいたのでよかった」と話した。(上村茉由、篠崎理、海老原由紀、丸山将、鴨川一也)
http://www.sankei.com/region/news/170830/rgn1708300005-n1.html
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