2017年12月24日日曜日

いじめ原因 第三者委調査、学校は訴え無視

学校側の責任を指摘する「いじめ問題対策委員会」の報告を受け、謝罪する田渕博之市教育長(右から2人目)ら市教委幹部=兵庫県加古川市役所で2017年12月23日午後3時38分、松田学撮影

 兵庫県加古川市で2016年9月に市立中2年の女子生徒(当時14歳)が自殺したことを受け、同市教委が設置した第三者委員会は23日、「いじめが原因」とする調査結果を発表した。自殺3カ月前に学校が実施したアンケートで女子生徒がいじめられていることを示す回答をしていたのに「学校は何ら対応しなかった」と厳しく指摘した。

 女子生徒は16年9月12日午前7時ごろ、自宅近くの屋外で自殺を図り、同20日に亡くなった。遺族が市教委に原因の調査を要請。自宅で「いじめ」の文字が入ったメモが見つかったことなどから、弁護士や社会福祉士ら5人の有識者による「市いじめ問題対策委員会」が同年11月から調査を始めた。

 対策委の報告書によると、女子生徒は中1の頃からクラスや部活動で無視、仲間外れ、嫌なあだ名で呼ばれるなどのいじめを受けた。中1の2学期に、一緒にいじめられた生徒の保護者が学校に訴えたが、学校はトラブルと判断しただけで、いじめはひどくなり、無力感と死への願望を抱くようになった。

 中2になった16年6月の「学校生活アンケート」で、「友だちにバカにされることがある」「無視されることがある」などのいじめを疑わせる5項目について5段階の「5」の「あてはまる」を選択した。しかし、学校は一切、対応しなかった。

 委員長の吉田圭吾・神戸大大学院教授(臨床心理学)は記者会見で「この時に対応していれば、生徒は無力感から脱することができた。自死をせずに済んだと考えるのが合理的だ」と批判した。

 対策委の後に会見した市教委によると、女子生徒はアンケートでは「授業がよくわからないことが多い」など学習面に関する項目でも「あてはまる」を多く選択しており、学校は「学習指導を優先すべきだと判断し、いじめにまで考えが及ばなかった」と説明しているという。田渕博之教育長は「心よりおわびします。命を大切にする教育に全力で取り組みたい」と謝罪した。

 女子生徒の父親は弁護士を通じて手記を公表。「教師たちはいじめではないかという疑いすらないまま、単なるトラブルと片付けたり、娘がアンケートに託した『絶望の中にいる』というシグナルを無視したりした。アンケートの存在を知ったのは第三者委の調査で、担任から一切知らされなかった」と学校への不信感を示した。【広田正人、松田学】

「SOS]見逃さずに

 いじめに苦しむ生徒が発信する「SOS」が見逃されるケースは後を絶たない。

 長崎県新上五島町では2014年1月、町立中3年の男子生徒(当時15歳)が自殺。無料通信アプリ「LINE(ライン)」で自殺をほのめかし、同級生や一部の保護者も気付いていた。3年の夏休みの宿題でもいじめを示唆する作文を書いていた。15年7月に自殺した岩手県矢巾町立中2年の男子生徒(当時13歳)は、1年の時から担任と交わすノートに「死」という言葉を記していたが、担任らは踏み込んだ対応をできなかった。

 教育評論家の尾木直樹・法政大特任教授は今回の兵庫県加古川市立中の対応について「いじめは命に関わること。最優先にすべきだった」と批判した上で、アンケートでいじめと学習面の項目が混在していることについて「アンケートは教師から見えないことを聞くべきだ。学習面は普段の授業やテストで把握できるはず」と指摘する。「友人に見られるリスクがある中、アンケートで訴えるのはとても勇気が要ることだ。見逃され、絶望しただろう」と女子生徒の気持ちを推し量り、「教師の業務が多く、生徒に向き合えない状況が背景にあるのではないか」と話した。【山崎征克】

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https://mainichi.jp/articles/20171224/k00/00m/040/107000c

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