赤身の大衆向けマグロとしてスーパーや回転ずしなどで多く使われる冷凍メバチマグロが、不漁や漁獲規制による品薄で卸値が上昇している。豊富で手ごろな価格が長らく続いていたため代替品が見当たらず「このままでは安価でおいしいマグロが提供できなくなる」と卸業者らは危機感を募らせている。
メバチは高級すし店が扱うクロマグロに比べると脂乗りは控えめだが、赤身が鮮やかなことから関東や東北地方などを中心に人気があり、ネギトロなどの加工品にも利用されている。これまでは世界中で漁獲され国内在庫も豊富だったが、ここ1~2年で状況が悪化。太平洋沖での不漁やインド洋での漁獲規制などにより、漁獲量が急減している。
水揚げ不振を受け、東京・築地市場(中央区)の9月の入荷量は、前年同月比で約3割減少。潤沢だった2012年以前のほぼ半分まで落ち込んでいる。かつて1日に1000匹以上がところ狭しと並んだ同市場の競り場では現在、入荷が600匹に満たない日が多く、空きスペースが目立つ。卸会社の担当者は「以前は競りが長引いて声もかれたが、このごろはあっさり終わってしまう」と品不足を嘆く。
同市場9月の卸値は、1匹40キロ以上の主力サイズの中心値が1キロ当たり1150円前後と前年同月比で約2割高。特に「裾物」と呼ばれる格安ランク品の値上がりが目立ち、同950円と5割高にまで高騰している。消費者向けでも影響が出始め、スーパーなどでの特売が減り、回転ずし店でも「マグロは赤字すれすれ。気軽にレーンに流せない商品」(大手チェーン)と明かす。
マグロ業者らはメバチの代わりに同じ赤身マグロのキハダを売り込もうとしたが「中部や関西で人気が高く、メバチ同様に相場が上がっている」(築地の卸会社)ことで断念。ツナ缶の原料にもなるビンナガも検討したが「身がピンク色で赤身商材としては弱い」(同)と決め手に欠ける。
有力な代替品が見つからない中、秋の需要期を迎えて品不足が一層深刻となり、年末年始に向けて小売価格の上昇が避けられない状況だ。(2017/09/30-15:23)
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