働いた時間に関係なく賃金が支払われる裁量労働制で厚生労働省の調査データ比較に誤りが見つかり、それを引用した国会答弁を安倍晋三首相が取り消して謝罪した。
首相が最重要法案と位置づける働き方改革関連法案では、裁量労働の適用業種の拡大も盛り込まれている。不適切なデータ使用は、法案の正当性を揺るがしかねない深刻な事態だ。あまりに杜撰(ずさん)というほかない。
政府は「性格が異なるデータを不適切に比較したもので、調査そのものは誤りではない」として再調査に否定的である。
だが、客観性のあるデータを提示することは何よりも重要だ。丁寧な説明を欠くような姿勢では国民の理解は得られまい。
首相は1月の衆院予算委で厚労省の調査を取り上げ、「裁量制で働く人の労働時間の長さは、一般労働者よりも短いデータもある」としていた。ところがこのデータは、裁量制で働く人と一般労働者の労働時間を異なる方法で調査していたことが判明した。
首相答弁は「裁量制は長時間労働を助長するのではないか」という野党の批判に反論するためだった。前提が違うデータで両者を比較しており、答弁の撤回は当然である。答弁を作成したという厚労省も責任は免れない。
裁量制を一部営業職にも拡大する労働基準法改正案は、3年前に国会提出されたが、野党の反発が強く、一度も審議されずに棚上げにされてきた。これまでも同じ比較データが法案説明で使われてきた疑いもある。
裁量制には働く人が柔軟に自らの労働時間を決められるなど、多様な働き方を促す効果がある。これは労働生産性の向上に資するものにもなる。適用拡大は以前から産業界が求めていたものだが、適用対象となる労働者の健康管理などで課題も残る。
政府は答弁の撤回に伴い、裁量制拡大の施行時期を来年4月予定から1年延期する方針だ。
この時間的猶予を生かし、対象者の健康管理などで企業側に厳格な規定をいかに設けるかなど、適用拡大する上で欠かせない議論をもっと深めるべきである。
働き方改革法案には、残業時間に上限を設ける労基法改正案も盛り込まれている。労働者の心身の健康を損なう恐れがある長時間労働の是正も急務である。
http://www.sankei.com/economy/news/180222/ecn1802220020-n1.html
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