2018年6月20日水曜日

学校耐震化で塀は置き去り、倒壊で児童死亡

日経クロステック

 2018年6月18日朝に起きた大阪府北部地震で震度6弱を観測した大阪府高槻市内では、市立寿栄(じゅえい)小学校のブロック塀が倒壊して、登校中だった4年生の児童が下敷きになって死亡した。国や自治体が進める学校施設の耐震化で、塀は置き去りにされていることがあらわになった。

幅40mにわたって倒壊した高槻市立寿栄小学校のブロック塀。市によるとブロック1つの大きさは縦20cm、横40cmで厚みは不明。6月18日午後4時半すぎ撮影(写真:日経コンストラクション)

幅40mにわたって倒壊した高槻市立寿栄小学校のブロック塀。市によるとブロック1つの大きさは縦20cm、横40cmで厚みは不明。6月18日午後4時半すぎ撮影(写真:日経コンストラクション)

 地震で倒壊したのは、同校北側のプールに沿った高さ3.5mの塀だ。下側にある高さ1.9mのコンクリート製の基礎部分は1974年に完成。その後、プールの目隠しとして上側に付け足した高さ1.6mのブロック部分が幅40mにわたって倒れた。

 ブロックはコンクリート製で8段積み。「鉄筋は入っていたが、数は不明。今後、調査する」と市教育委員会は話している。

西から見た寿栄小学校のブロック塀の倒壊事故現場(写真:日経コンストラクション)

西から見た寿栄小学校のブロック塀の倒壊事故現場(写真:日経コンストラクション)

■建基法への不適合を放置

 ブロック塀の耐震基準は建築物と同様に建築基準法に基づき、1981年と2000年の2回にわたって2段階で強化されている。

 例えば、同法ではブロック塀の高さを原則、地盤面から2.2mまでと定めている。さらに壁体に一定間隔で縦方向に鉄筋を入れたり、基礎部分に鉄筋径の40倍以上の長さの鉄筋を埋め込んで定着させたりすることも求める。

 しかし、現行の基準に適合しない既存不適格のブロック塀は数多く残るとみられる。

手前に倒れるように崩れたブロック塀。大人の頭の高さほどにある基礎部分の天端から、ブロック塀の下端を固定していたとみられる短い鉄筋が突き出しているのが見える(写真:日経コンストラクション)

手前に倒れるように崩れたブロック塀。大人の頭の高さほどにある基礎部分の天端から、ブロック塀の下端を固定していたとみられる短い鉄筋が突き出しているのが見える(写真:日経コンストラクション)

 高槻市は市の施設に対し建築基準法12条に基づく点検を3年に1回、直近では16年度に実施していたが、塀については報告に含まれていなかったという。「なぜ報告に含まれていなかったのか、原因を究明しているところだ」(市教委)。市教委は、倒壊した寿栄小学校の塀が現行基準に適合しないことは認めている。

 文部科学省は公立学校施設の耐震化を推進している。ただし、毎年実施している公立学校施設の耐震改修状況調査の対象は、校舎の耐震化と体育館などの吊り天井の落下防止対策だけで、塀などの工作物は対象外だ。

 17年度の同調査で、公立小中学校の校舎の耐震化率は98.8%、体育館などの吊り天井の落下防止対策実施率は97.1%と既に高い水準に達している。高槻市もこの点では全国でトップクラスだ。学校施設の安全性が建物だけでは確保できない現実を直視した施策が望まれる。

寿栄小学校から北に1kmほど離れた高槻市立如是中学校のグラウンド脇にも同様のブロック塀があるが、目立った被害は見られなかった。鉄筋の配置や控え壁の有無などは不明だ(写真:日経コンストラクション)

寿栄小学校から北に1kmほど離れた高槻市立如是中学校のグラウンド脇にも同様のブロック塀があるが、目立った被害は見られなかった。鉄筋の配置や控え壁の有無などは不明だ(写真:日経コンストラクション)

 菅内閣官房長官は6月18日、小中学校のブロック塀の安全性を点検するよう文科省に指示。同省ではこれを受け、19日に全国の小中学校に緊急点検を要請した。

(日経 xTECH/日経コンストラクション 安藤剛、三ケ尻智晴)

[日経 xTECH 2018年6月19日掲載]

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