大阪市の吉村洋文市長は22日、地震で倒壊する恐れのある民間所有のブロック塀について、撤去や建て替えの費用を補助する市独自の制度を創設すると表明した。通学路に限らず対象とする方針。府内では国の補助を使ったブロック塀の撤去の助成制度はなかったといい、9月議会での予算案提案を目指す。
吉村市長はこの日、18日朝に大阪府北部を襲った地震で、通学路脇の民家のブロック塀の下敷きになって亡くなった東淀川区の安井実さん(80)の遺族を訪問。遺族からは「地震が数分遅かったら、大勢の児童が犠牲になっていたかもしれない」と塀の安全確保を求められたという。吉村市長は国にも財政措置を求めており、「安全な通学路、安全な道の確保に努める。市民の皆さんにもブロック塀の危険性を認識し、安全なものに替えてほしい」と呼びかける。
府内では今回の地震を機に学校で違法状態の塀が次々に見つかり、撤去の動きが進むが、民間所有だと危険があっても費用などがネックになり、撤去が進まない現状がある。
国土交通省によると、2011年の東日本大震災を機に、翌年度から耐震化など震災対策を促進する「防災・安全交付金」ができた。自治体が負担の半額を補助するが、府によると、ブロック塀の撤去に活用している府内の自治体はない。
一方、南海トラフ巨大地震の対策を進めている静岡市は、02年度からブロック塀撤去に最大10万円、改修に同25万円を助成する制度を設け、18年度は約620万円の予算を組んだ。
宮城県は02年に市町村と共同で仙台市を除く小学校の通学路のブロック塀などを調査。対象となった8193カ所のうち536カ所が撤去や改修が必要な危険性が高い塀と判断された。指導を続け、昨年度88カ所まで減少したが、全てが民間の所有だという。同県の担当者は、民間所有の塀の撤去が特に難しいといい、大阪府の松井一郎知事も「一方的に行政が撤去できるものではない」と話す。
東北大・災害科学国際研究所の五十子幸樹(いかごこうじゅ)教授(耐震工学)は「いつ起こるか分からない震災に、あえて撤去や改修費をかけることに二の足を踏むことが背景にあるのかもしれない。促進のため公的な助成が必要だ」と指摘する。【岡崎大輔、岡村崇】
被災地、真夏日に 医療チーム、避難所巡回
近畿地方は22日、高気圧に覆われて気温が上昇し、被災地を含め各地で真夏日になった。大阪府内では約500人が避難を続けており、気象庁は熱中症への注意を呼びかけている。医師や看護師らの医療チームは避難所を回り、被災者の健康状態を確認している。
大阪管区気象台によると、震源地に近い大阪府枚方市で最高気温31・1度を記録。大阪市は30・8度でこの夏一番の暑さになった。京都市や奈良市でも30度を超えた。23日は梅雨前線が北上する影響で、近畿各地は昼ごろから雨が降る見通し。
大阪府によると、22日午後3時現在、高槻市や茨木市など138カ所に499人が避難を続けている。
日本赤十字社などの医療チームはこの日、茨木市内の避難所計10カ所を巡回。市立天王小学校の体育館では、看護師らが高齢者らに「体調はどうですか」などと声をかけて回った。1人暮らしの女性(66)は余震が不安で、地震が発生した18日から体育館に身を寄せる。女性は「気に掛けてもらってうれしかった。暑いので熱中症に気をつけて水分をたくさんとりたい」と話した。体育館には昼過ぎ、扇風機が運び込まれた。
府は住宅被害が深刻な被災者に対し、府営住宅などへの入居で対応する方針。松井一郎知事は22日の災害対策本部会議で、来月中に避難者の解消を目指す考えを示した。【山崎征克、畠山哲郎】
通学路点検、一斉に開始 大阪府教委
大阪府教委は22日、府内の公・私立学校などの通学路にあるブロック塀の安全点検を一斉に始めた。29日までに結果報告を求めている。
対象は府立学校202校と、大阪・堺両市を除く各市町村立の1087校・園、府内の私立校446校など。建築基準法に基づき、塀の高さ(2・2メートル以下)や、補強のための「控え壁」設置、ぐらつきなど8項目について点検表に基づき、目視で実施するよう求めている。
主に学校周辺の通学路や、高校などでは最寄り駅・バス停からの通学路が対象。政令市の大阪・堺両市も同様の調査を始めている。【芝村侑美】
http://mainichi.jp/articles/20180623/ddn/041/040/043000c
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