自民党の岸田文雄政調会長は24日の記者会見で、西日本豪雨への対応や外交課題を勘案し、9月の党総裁選に立候補せずに安倍晋三首相を支えると表明した。しかし、実態は国会議員票と地方の党員票の両方で支持の広がりが見込めない中での「撤退」に近い。岸田氏は首相からの禅譲に期待をつなぐが、これで「次の次」が保証されたわけではない。
岸田氏が会長を務める自民党岸田派は禅譲論と主戦論に分かれている。対応を一任された岸田氏は会見で、首相支持に向けて「一致結束してもらえると信じている」と述べた。
岸田氏は、首相と良好な関係を築くことで将来の禅譲に望みをかけてきた。その背景には、2000年の「加藤の乱」のトラウマがある。宏池会(現岸田派)の会長だった加藤紘一氏(16年死去)は森喜朗内閣への不信任決議案に同調しようとして失敗し、首相への道を断たれた。
岸田氏は、安倍首相を支持すれば、選挙後の党役員と閣僚人事で岸田派が一定の処遇を受け、自身も「次」に備えて求心力を維持できると考えたようだ。しかし、自民党の三役経験者は「過去にも禅譲の例はない」と冷ややかだ。
岸田氏は総裁選に立候補したことがなく、報道各社の世論調査でも「総裁にふさわしい人」として、首相や石破茂元幹事長らに認知度で大きく後れをとっている。
細田、麻生、二階3派に無派閥議員の一部を加えた首相支持勢力は、党所属国会議員の半数を超えている。党員票も首相と石破氏の争いになる可能性が高く、岸田氏は当初から立候補に慎重だった。岸田氏周辺は「出るなら最低限、石破氏を超えて2位にならなければいけないが、難しい」と認めた。
岸田氏は迷ったが、党内は不出馬を織り込み済みだった。細田派の下村博文事務総長は「岸田派は安倍支持一本で応援してもらえるのではないか」と語った。岸田派が加われば、国会議員票では首相が圧倒的に優位になる。
一方、立候補の準備を進める石破氏は24日、「選挙はやってみないと分からない。実際にそれぞれの議員がどう判断するかだ」と記者団に語った。石破派は、首相と石破氏の一騎打ちを想定し、党員票に活路を見いだそうとしている。
野田聖子総務相は、岸田氏の判断について「影響はあまり考えていない。少しでもオープンな自民党を作っていけるよう取り組みたい」と記者団に語った。ただ、野田氏は立候補に必要な20人の推薦人確保のめどが立っていない。
首相は24日夕、岸田氏の決断に関する記者団の問いかけには直接答えず、笑顔で首相官邸を後にした。【小田中大、田中裕之、高橋恵子】
https://mainichi.jp/articles/20180725/k00/00m/010/123000c
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