9月の自民党総裁選をめぐり、立候補を正式表明する前から劣勢が伝わる石破茂元幹事長の陣営に活気が戻ってきた。
竹下派(平成研究会、55人)の参院議員(21人)が石破氏支持に回る見通しとなったからだ。安倍晋三首相(党総裁)の優位は変わらないが、石破氏が一定の票を確保すれば、今回の総裁選で敗れても「ポスト安倍」の芽を残す可能性が出てくる。
「どんなに批判されても言うべきことをきちんと言った政治家がこの国にはいた。一歩でも近づきたい」
石破氏は28日、兵庫県豊岡市の斎藤隆夫記念館を訪問。斎藤の足跡をたどる展示を丹念に見学後、記者団にこう感想を漏らした。
斎藤は昭和15年、帝国議会で満州事変後の軍部の政治介入を徹底批判した「反軍演説」などで知られる元衆院議員。同年に衆院を除名されたが、17年の衆院選で軍部の妨害をはねのけ、議員に返り咲いた。
党内のさまざまな圧力にめげず、信念を貫けば圧倒的に不利な状況も打破できる−。自身の境遇を斎藤に重ね合わせ、反骨精神をアピールしてみせた。
党内では、石破派(水月会、20人)以外で「石破氏支持」を公言する議員は数人にとどまっていた。今回の総裁選は国会議員票(405票)と党員らの投票を基に算出される党員票(405票)の計810票で争われるが、「石破氏の議員票は多くて30票程度」(党幹部)ともされた。
そうした中で、政界引退後も参院竹下派に影響力を持つ青木幹雄元参院議員会長が、同派を束ねる吉田博美参院幹事長に「石破氏支持」でまとめるよう指示した。若手議員は「石破氏には違和感があるが、吉田氏に頼まれれば全員が従うだろう」と語る。
石破氏は28日、兵庫県豊岡市で記者団に「最終的に公になるまで論評することではない」と述べるにとどめた。ただ、参院竹下派の加勢で、50票前後の国会議員票を確保する見通しが立ち、石破派幹部は「政治生命をつなぐ戦いができる」と胸をなで下ろした。
石破派は今回、党員票の比率が議員票と同数になったことも追い風と受け止めている。「出馬表明前でも、それぞれが地元で選挙活動を始めよう」。26日の石破派幹部会では、前倒しで党員票集めを進めることを申し合わせた。西日本豪雨の復興を見極めつつ8月の早い段階で正式に出馬表明する方向で調整が進む。
石破氏も22日の通常国会閉会直後から群馬、愛知など各県に足を運び、講演などをこなしてきた。大阪府や富山県では地方議員を中心に石破氏の支援組織も立ち上がった。
一方、竹下派は創設者の竹下登元首相の弟、竹下亘総務会長が4月に会長に就き、総裁選を「鉄の結束」を取り戻す場とする意向だった。ところが、石破氏支持で動き出した参院側に対し、衆院側は首相を支持する議員が圧倒的に多い。衆参が分裂した対応をとれば、党内の影響力低下は避けられない。
衆院側は複数の議員が連絡を取り合い「衆院は首相支持しかない」と確認し合ったが、総裁選後の内閣改造・党役員人事への影響が懸念される。(奥原慎平、田中一世)
http://news.livedoor.com/article/detail/15080010/
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