2018年7月28日土曜日

LGBT“生産性”発言で大炎上 自民党・杉田水脈の“脈々”と続く問題発言まとめ

 自民党の杉田水脈衆院議員による『新潮45』への寄稿文「『LGBT』支援の度が過ぎる」が多くの批判を集めている。これまでの杉田氏の発言や主張、関連する発言などをまとめてみた。

杉田水脈 自民党・衆院議員
「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」
『新潮45』8月号

 言うまでもないが、性的指向によって人は差別されてはいけない。しかし、子どもを持つかどうかで人の価値を判断し、「生産性」という言葉を使って線引きしている杉田氏の発言は明らかに差別を助長するものだ。「生産性」が何を意味していようが、その有無や多寡によって差別されることがあってはならないし、行政によるサービスや支援を受ける権利を有することは自明である。人権についてわかっているのだろうか?

 性的マイノリティを支援する全国団体「LGBT法連合会」は23日、抗議の声明を発表。杉田氏の主張は事実誤認が多いとした上で、「困難を抱えている当事者に対して侮辱的・屈辱的とも取れる内容であり、許容することができない」「当事者の人権を侵害するだけでなく、現実に存在する『性の多様性』を無視し、与野党や各種団体が進めている施策の実施に反し、国会議員としての資質に疑問を抱かざるを得ない」と強く非難した(BuzzFeed News 7月23日)。

「国政選挙で掲げた公約にも反している」

 自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」にアドバイザーとして助言を続けている「LGBT理解増進会・LGBT理解増進ネット」は緊急声明を発表。「杉田議員の記事は、自民党特命委員会の考え方とは全く異なっています。それだけではなく、党の直近の2回の国政選挙で掲げた公約にも反していると考えます」とし、自民党本部に対して善処するよう申し入れたと報告している(7月23日)。たしかに、自民党は2017年の衆院選で「性的指向・性自認に関する理解の増進を目的とした議員立法の制定を目指す。多様性を受け入れる社会の実現を図る」という公約を掲げていた(毎日新聞 web版 2017年10月18日)。

杉田水脈 自民党・衆院議員
「『常識』や『普通であること』を見失っていく社会は『秩序』がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません。私は日本をそうした社会にしたくありません」『新潮45』8月号

 杉田氏の主張は一貫している。LGBTに代表される性的少数者は「普通」ではない存在であるということだ。寄稿の中では「普通に恋愛して結婚できる人まで、『これ(同性愛)でいいんだ』と、不幸な人を増やすことにつながりかねません」とも書いている。杉田氏の中では異性愛が「普通」で同性愛は「不幸」なこととされているようだ。

 杉田氏は『新潮45』2017年3月号でも「『多様な家族』より普通の家族」と題した寄稿を行っているが、ここでも「子供のころから私は『普通』というものをかなり意識していました」「この『普通』を普通に語ることができない日本になってしまいました」と繰り返し「普通」について触れ、「『多様な家族』があふれる日本は、果たして幸せな国なのでしょうか」と問いかけていた。

 しかし、在英国際ジャーナリストの木村正人氏は、「杉田議員の論理の組み立て方は『私はこうだから、みんなそうなの』という極めて幼稚なもので、説得力は全くありません。データの裏付けも科学的根拠もありません」と指摘する(Yahoo!ニュース個人 7月24日)。

杉田水脈 自民党・衆院議員
「同性愛の子どもは普通に正常に恋愛ができる子どもに比べて自殺率が6倍高いんだと。それでもあなたは必要ないと言うんですか? と言われまして。私はそれでも優先順位は低いと」
日本文化チャンネル桜「日いづる国より」2015年6月5日

 杉田氏はここでもLGBTの人たちに税金を使って支援することに対して否定的な意見を語っていた。何より、カメラの前で「自殺率が6倍高い」と半笑いで語ることができる神経が信じられない。

 杉田氏の近著『民主主義の敵』(小川榮太郎氏との共著)のキャッチコピーは「少数意見の偏重で国民は幸せになれるのか?」だが、この書名にならえば杉田氏は「マイノリティの敵」だ。

対応に苦慮する自民のオジサンたち

二階俊博 自民党・幹事長
「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」
朝日新聞デジタル 7月24日

 杉田氏は7月22日、ツイッターに「自民党に入って良かったなぁと思うこと。『ネットで叩かれてるけど、大丈夫?』とか『間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ』とか『杉田さんはそのままでいいからね』とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださること」と記していた(現在は削除)。

 はたして、どんな大臣クラスの自民党の議員が杉田氏の発言を擁護しているのかと思いきや、「オモテに出てはいけないおじさん」(プチ鹿島氏)こと二階俊博幹事長だった。二階氏は杉田氏の一連の発言を容認しているが、自民党は差別的な言動も「政治的立場」として容認する政党だということだろうか?

 二階氏は同じ記者会見で「当事者が社会、職場、学校の場でつらい思いや不利益を被ることがないよう、多様性を受け入れていく社会の実現を図ることが大事だ」とも語っているが、これは杉田氏の主張とは真逆である。杉田氏は『新潮45』への寄稿で「自分が認識した性に合ったトイレを使用することがいいことになるのでしょうか」と公共の場におけるLGBTの人々への配慮を否定しており、「多様性を受け入れていく社会の実現」に真っ向から反対している。

菅義偉 官房長官
「国会議員の一つひとつ(の発言)に、政府の立場でコメントすることは控えたい」
朝日新聞デジタル 7月24日

 24日の記者会見で杉田氏の発言について質問された菅官房長官だが、コメントを避けた。なお、昨年4月に今村雅弘復興相(当時)が失言で辞任に追い込まれた際は「極めて不適切」とコメントしている。杉田氏の発言は「不適切ではない」というのが政府の見解なのだろうか。

杉田水脈 自民党・衆院議員
「女として落ち度があった」
BBC NEWS JAPAN 6月29日

 杉田氏はこれまでに数限りないほど問題発言や暴言を繰り返してきた。記憶に新しいのは、安倍晋三首相に近いジャーナリストとして知られる山口敬之氏に強姦されたと名乗りを上げた伊藤詩織氏に対する発言だ。

 BBCが制作したドキュメンタリー番組『Japan's Secret Shame(日本の秘められた恥)』の取材を受けた杉田氏は、「女として落ち度があった」と伊藤氏を批判した。また、「男性は悪くないと司法判断が下っているのにそれを疑うのは、日本の司法への侮辱だ」とも語っている。

BBCの編集は不当な「切り取り」だと主張

 杉田氏はブログでBBCの編集が「切り取り」だと主張したが(6月30日)、同時に「伊藤詩織氏のこの事件が、それらの理不尽な、被害者に全く落ち度がない強姦事件と同列に並べられていることに女性として怒りを感じます」とも書いており、BBCの切り取り方は非常に優れていると思わざるを得ない。

杉田水脈 自民党・衆院議員
「子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳教育をする。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデルを21世紀の日本で実践しようとしているわけです」
産経ニュース 2016年7月4日

 杉田氏は産経ニュースの中で「杉田水脈のなでしこリポート」という連載を持っていたが、これはその中での発言。「保育園落ちた、日本死ね」という発言を取り上げているのだが、なぜか途中から「日本を貶めたい勢力」が国連で暗躍しているという話になり、日本の保育所が「洗脳教育」の場になっていると主張しているのだ。産経ニュース……。

杉田水脈 自民党・衆院議員
「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」
BLOGOS 2014年11月6日

 次世代の党に所属していた頃の杉田氏の国会での質疑からの抜粋。杉田氏は国会に提出されていた「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を厳しく批判。「本来日本は(中略)世界で一番女性が輝いていた国です。女性が輝けなくなったのは、冷戦後、男女共同参画の名の基、伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等を目指してきたことに起因します」として、「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」と言い放った。

「女性の活躍推進」は安倍政権の主要政策の一つだが、杉田氏は批判の論拠としてジェンダーフリー教育を考えるシンポジウムでの「結婚や家族の価値を認めないジェンダーフリーは文化の破壊につながる」という安倍首相の発言を引用している。杉田氏の思想の背後には安倍首相がいる。

安倍晋三 首相
「稲田朋美を見習え」「どんな形でもいいから国会に上がってきなさい」
『週刊文春』8月2日号

 杉田氏は2012年12月に日本維新の会から出馬。小選挙区では敗れたが、比例近畿ブロックで復活して初当選。その後、落選を経て昨年の衆院選で自民党の比例中国ブロックから出馬し、2度目の当選を果たしている。

 彼女を自民党に引き入れたのは安倍首相だった。12年5月、当時は野党議員だった安倍氏は杉田氏と議員会館で面会し、上記のように激励したという。昨年の衆院選で自民党から出馬することになったのは、ジャーナリストの櫻井よしこ氏によると安倍首相が「杉田氏は素晴らしい」と讃え、萩生田光一官房副長官が熱心に勧誘したからだ(「櫻LIVE」2017年9月29日)。

 安倍首相によるスカウトの経緯は稲田朋美氏のときと同じである。稲田氏は「自民党で百人斬りの話を講演する機会があって、そこにいた安倍(晋三)幹事長代理の目に留まって、私は政治家になったんですね」と語っている(産経ニュース 2015年12月19日)。

 杉田氏はLGBTへの蔑視、差別的な世界観、人権意識の希薄さを隠そうとしないが、文筆家の古谷経衡氏は「いわゆる『保守界隈』一般において、広く普遍的に観られる言説であり、杉田議員のような世界観の開陳はあくまで氷山の一角に過ぎない」と述べている(Yahoo!ニュース個人 7月24日)。コラムニストの小田嶋隆氏は「二階幹事長が杉田議員の発言を大筋において容認しているのは、『彼女の見解こそが自民党支持者の大勢を占めるサイレントマジョリティー層の総意だから』だ」と指摘する(日経ビジネスオンライン 7月27日)。

元祖「ネット右翼のアイドル」の反応は?

 杉田氏は、安倍首相が言いたくても言えない主張を代弁しているだけなのかもしれない。なお、稲田氏は7月24日、ツイッターに「私は多様性を認め、寛容な社会をつくることが『保守』の役割だと信じる」と書き込んでいた。

(大山 くまお)

杉田水脈 自民党・衆議院  ©文藝春秋

Let's block ads! (Why?)

http://news.nicovideo.jp/watch/nw3709757

0 件のコメント:

コメントを投稿