終盤を迎えている自民党の総裁選(2018年9月7日告示・20日投開票)で、安倍晋三首相(党総裁)の陣営による「圧力問題」がクローズアップされつつある。
石破茂元幹事長の陣営の斎藤健農相が、「安倍応援団」の一人から辞任を迫られたと暴露した問題だ。安倍氏は辞任を求めたとされる人物の名前を明かすように求めたが、石破氏はこの発言を財務省のセクハラ問題と「仕組みが似ている」と憤然。安倍氏は斎藤氏が名前を明かさないことで様々な人が疑われるため「我が党自体が毀損」されると主張する一方で、斎藤氏は発言について追加説明は行わない考えで、総裁選後も禍根が残る可能性もありそうだ。
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自民党総裁選は安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長の一騎打ちだ。「圧力」問題で舌戦がヒートアップした
「私も『どういう意図で言ったの?』と確かめてみたい」
この「圧力」問題は、斎藤氏が9月14日の石破派の会合で、
「私は、ある安倍応援団の一人に言われました。『斎藤よ、内閣にいるんだろ?石破さんを応援するんだったら辞表を書いてからやれ』。こう言われました」
などと暴露したことに端を発する。
9月17日夜、安倍・石破の両氏は民放のニュース番組に相次いで出演。最も激しいやり取りがあったのが、最後に討論に臨んだ「報道ステーション」(テレビ朝日系)だ。
安倍氏によると、この問題について陣営に確認したところ、
「みんな『そんなことがあるはずがない』と、大変怒ってました。もしそういう人がいるのであれば、名前を言ってもらいたいですね。私も『どういう意図で言ったの?』と確かめてみたい」
などと事実関係を否定した上で、斎藤氏に辞任要求した人物の名前を明かすように求めた。
さらに安倍氏は、01年4月の総裁選で小泉純一郎氏と橋本龍太郎氏が争い、小泉氏が圧勝した際のエピソードを引き合いに、「圧力」が仮にあったとして影響は小さく、逆に「かわいそう」アピールにも使えるとする持論を展開した。
「私は小泉応援団だったんですが、その時、我々もですね、一度『結構圧力かけられてるよね』と、結構みんな言ったんですが、ほとんどないんです。ないけど、我々もそういった方がですね、言わば『陣営がかわいそうだな』ということになりますし...」
「言っちゃったらどうなるか。もう、それこそ党内はめちゃくちゃでしょうよ」
そこで収まらないのが石破氏だ。斎藤氏に事実関係を確認したかについては「聞きません」。その上で、「圧力」は実際にあったとの見方を示した。
「ただ、斎藤健さんという人は、作り話をするような人では絶対にない。それは、閣僚としてああいう場に立つわけですよ、ありもしないことを言うような、斎藤健という人では、まったくない。それは、彼がそう言うからには、そういうことはあったんでしょう」
さらに、安倍氏が犯人捜しを求めたことや、「圧力」を軽視するかのような発言をしたことに反発を強めた。
「それじゃあ、『じゃあ誰なんだ』という話ですけれどね、これ、仕組みが財務省のセクハラ疑惑と似ている気がするんですよね。それは『名乗り出なさい』って言うのがね。被害者が名乗り出なさい、というのが。斎藤さんは、『誰』というのは言わないですよ。そこは彼の色んな配慮があったんだと思う。言っちゃったらどうなるか。もう、それこそ党内はめちゃくちゃでしょうよ」
「そういう(自民党から当選して活動している)人に対して、それは『風物詩のようなもの』だとか、『そういうことはよくある』とか、そうだとしても、そういうことがあるような自民党であってはならない。そういう自民党にしたくない。私はそう思います」
対して安倍氏は、名前が出ないことの悪影響を強調した。
「名前を言われないたびに、色々な人が疑われていて、週刊誌から『あなたが言ったんだろう」』と言われている。非常に嫌なことになっているんですね。自民党の総裁選、私は最後の総裁選ですから、そんな総裁選にはしたくないんですよ」
「誰々がこう言った、と言えば、言われた人は、それは反論すればいいじゃないですか。私と言うよりも、我が党自体が棄損されると心配している」
ただ、石破氏の強い反発に押されたのか、安倍氏は「辞表を書いてからやれ」という発言自体は否定せずに、「文脈」を重視する方向にトーンダウンした。
「(斎藤氏は)非常にまっすぐな人ですから、彼がそういうことでウソをついたとは思っていません。でも、どういう話の中であったか、という文脈を見なければいけませんし...」
斎藤氏は9月18日の記者会見で、
「私が申し上げたことは金曜日の私の発言で尽きており、改めて追加をしたり改めて解釈をしたりする、そういうことはない」
と説明している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
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