2018年9月5日水曜日

海上空港のもろさ露呈 関空、想定外の高潮 対策追いつかず

 台風21号が直撃した関西国際空港は高潮で滑走路や施設が浸水し、空の玄関口としての機能を完全に失った。過去にも地盤沈下や冠水などの被害が発生。護岸でかさ上げしてきたが、今回想定外の高潮で浸水を防げず、海上空港としての脆弱さを露呈した。関空再開の見通しが立たない中、関西経済をけん引しているインバウンド(訪日外国人)需要の減少など影響を与えそうだ。

 台風から一夜明けた大阪湾。関空との連絡橋はタンカーと衝突した部分がえぐれ、滑走路はいまだに水が残り、爪痕が生々しく残っていた。

 関空が開港したのは、1994年。沖合約5キロに全長3500メートルのA滑走路と、全長4000メートルのB滑走路の2つがあり、24時間離着陸できる。

 開港当初から、指摘されていた関空の構造上の弱点の一つは、軟らかい地盤だ。水深18メートルの地盤に造られており、1期島は通算で約3.4メートル沈み、今も年間約6センチのペースで沈下している。

 地盤沈下が続く中、高潮対策の最善の策の一つと言われるのが「護岸工事」だ。関空は開港以来、水害対策を強化。2004年から「50年に1度に相当する」高波にも耐えられるよう、護岸を海面から約5メートルの高さまでかさ上げした。記録の残る最高潮位(293センチ)だった第2室戸台風(1961年)を想定した対応だった。

 だが、今回はそれを上回る過去最高潮位の329センチを観測。国土交通省によると、駐機場も含め全面的に冠水し、最大約50センチの深さとなった。記録的な潮位を観測した気象要因としては、台風の通過が満潮時刻と同時期になるなど様々な条件が重なったことがある。

 関空では04年にも台風による高潮と高波の影響で道路がえぐられる被害が発生。河田恵昭・関西大特任教授(防災学)は「毎年、地盤沈下しており、滑走路はかさ上げできない。南海トラフ地震での津波が押し寄せれば水没する可能性は大きい」と指摘する。

 もう一つの弱点は、災害時のアクセスにある。空港につながる陸路は、タンカーが衝突し、通行できなくなった道路と鉄道が通る連絡橋が唯一だ。台風などの際は「孤島化」するリスクと隣り合わせにあり、今回はその懸念が現実化。利用客約3千人が空港に閉じ込められ、一夜を過ごすなど被害が拡大した。防災科学技術研究所の水・土砂防災研究部門長の三隅良平氏(気象学)は「海からの浸水に加え、強い風で橋が損傷するなど様々なリスクを想定すべき」という。

 国内では最近、海上空港の建設が進んだ。高潮や高波対策に関する国の具体的な規定はない。各空港に任されているのが現状で、関空のケースは対岸の火事ではない。

 05年開港の中部国際空港(愛知県常滑市)では、多くの死者を出した伊勢湾台風(59年)を想定し、海面から高さ5~7メートルの護岸を設置。東日本大震災を受け、15年度から、防水や排水工事なども実施した。羽田空港(東京)も5.1メートルの高潮を想定。海面から最大で高さ6.5メートルの護岸を整備中だ。

 大阪では19年6月に20カ国・地域(G20)首脳会議が開催。25年の国際博覧会(万博)の誘致活動に取り組んでいる。海外からの空の玄関口となる関空の機能不全は、日本の危機管理が問われる事態になりかねない。森信人・京都大防災研究所准教授(沿岸災害学)は「航空機が滑走路の進入の障害になるため、単純には、かさ上げできない。陸自体を高くすれば解消されるが、コストが膨大になる。コスト問題をどう解決していくかが課題」と指摘する。

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